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イケメン調査員に心を読まれたい! 10―4(葉芝真己)

2010年10月1日

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写真:10―4[作]葉芝真己(スクウェア・エニックス)10―4[作]葉芝真己(スクウェア・エニックス)

イラスト:(C)2010 Maki Hashiba/SQUARE ENIX拡大(C)2010 Maki Hashiba/SQUARE ENIX

 広い肩幅に長い手足、がっちりした骨格を感じさせながらも細い指先。葉芝真己の描く男子はいつもカッコイイ。長らく冬水社の専属作家であった葉芝が、他誌にも活躍の場を広げて、次々とコミックスがでた。イケメン二人が子育てするパパ漫画「キッズログ」(幻冬社)も捨てがたいが、イケメンの数ではこちらが上回るので、本書「10―4」(テンフォー)を取り上げてみたい。

 依頼を受ければ学校や会社などどこにでも潜入して調査し、問題を解決する機関「D→COY(ディーコイ)」。その高校生チームの伍代七緒(ごだい・ななお)は接触した人間の思考を読み取り、操作する能力を持つ。七緒の弟・然(ぜん)は、接触することで特定の記憶を消し去る能力をもち、兄の七緒が他人の思考を読みすぎて疲れたときにも、その消去ができる。そのほか、モデルばりの美男子の須藤航平、女装もできる渡瀬麻弓がチームの仲間だ。

 1巻では、何者かから嫌がらせを受ける女子高生・美咲からの依頼を受ける。七緒と航平、麻弓は美咲と同じ学校に編入して調査を開始する。本来はその美貌(びぼう)や背格好から目立ってしまうはずのメンバーたちが「擬態」して、そのオーラを隠して普通の高校生の中にとけ込んでしまうのが、「decoy」(疑似餌)、つまりこの機関の名前の由来だ。七緒は思考を読み取る能力を使って犯人の目星をつけるが、疑わしい人間全員をさわることはできない。それぞれ特技を持つ仲間たちと協力して犯人を絞り込んでいく様子は手に汗握るのだが、その後にまたどんでん返しが待っていて、最後まではらはらし通しなのだ。

 しかし、七緒を始め、「D→COY」のメンバーは全員イケメン。最近男の子ばかり出てくる少女漫画は多いけど、この掲載誌「Gファンタジー」って少年誌だよね? 2巻の舞台は全寮制の演劇専科の高校で、さらに登場するイケメンが増える。2巻はこの9月にドラマCDになり、「やっぱ、いまどき売れるのはイケメンが多い作品なのか」と実感させられる。ついでにいうと、私は2巻まで読んでも、このタイトルの意味が分からなかった。何か読み落としているんだろうか、と悩んでいたのだが、編集部によると、警察無線などで使われる「了解」のコードなんだそうだ。「受信良好。」「応援頼ム。」など、各話のサブタイトルも無線通信コードに由来するとのこと。

 同じ葉芝が描く「キッズログ」。こちらは突然子どもを引き取ることになったイケメンと、その子が通う保育園の男性保育士の交流を描く作品だ。掲載誌「ルチル」はソフトなボーイズラブ雑誌なのだが、1巻ではいまだにこの二人に愛が芽生える様子がない。私としては、最初から「男の友情物語です」と言われて読んでいたら、友情で終わっても文句はないのだが、掲載誌ゆえについ期待してしまい、裏切られたら、なんだか恥ずかしいというか、自分が低俗な人間になった気がしてがっくりしてしまいそうだ。期待していいんでしょうか。いや、自分が低俗な人間なのは、否定しないんですけどね。

 ところで、葉芝といえば漫画専門の出版社・冬水社の創設メンバーで、冬水社の作家がほかの出版社で描くことはなかったはず。なぜだろうと思いネットで探したら、持病の腰痛と「フリーになりたい」という希望のために、08年に冬水社を退社したのだそう。確かに、冬水社は取り扱い書店が限られているし、最近の編集方針が「ボーイズラブっぽいんだけど、ボーイズラブではなく、あくまでも男の子の友情!」だから、自由な作品が描けなかったのかもしれない。

 いずれにしろ、葉芝の描くカッコイイ男の子たちがたくさん世に出るのはうれしいことだ。いらない想像だが、ボーイズラブ小説界からも「挿絵を描いてくれ」というオファーがたくさん来るようになるだろうなあ。それくらい、葉芝の描く男子はイケメンなんですよ、ホント。

プロフィール

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松尾 慈子(まつお・しげこ)

1992年朝日新聞入社。金沢、奈良支局、整理部、学芸部などを経て、現在、名古屋本社報道センター記者。漫画好き歴は四半世紀超。一番の好物は「80年代風の少女漫画」、漫画にかける金は年100万円に達しそうな勢いの漫画オタク。

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