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じれったくて待ち遠しい! 花は咲くか(日高ショーコ)

2010年10月29日

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写真:花は咲くか[作]日高ショーコ(幻冬舎コミックス)花は咲くか[作]日高ショーコ(幻冬舎コミックス)

写真:(C)HIDAKA SHOKO, GENTOSHA COMICS拡大(C)HIDAKA SHOKO, GENTOSHA COMICS

 ここ数カ月、私の好きなコミックスの続刊がぞくぞくと発売され、睡眠時間を削って読む日々が続いている。「チェーザレ」(惣領冬実)、「きのう何食べた?」「大奥」(よしながふみ)、「百鬼夜行抄」(今市子)、「秘密」(清水玲子)、「恋する暴君」(高永ひなこ)などなど……。しかしこれらは以前にコラムで紹介してしまったので、この読後の感動をみなさまと分かち合えないのがとても寂しい。かといってもう一度紹介するのは、さすがに許されないであろうし……。とりあえず、お伝えしたいのは、「やっぱりおもしろい作品はすごくおもしろいよね! 漫画って楽しいね!」って事なのだ。いえ、40歳にもなると、まわりに漫画を読む人が少なくなってくるんですよ、特に女性は。ちょっと寂しいだけなんです。

 さて、今回取り上げるのはボーイズラブ(BL)界で最近とみに人気がでてきた日高ショーコ。本書は1巻から約1年待ってこの9月にようやく2巻がでて、「ああ、やっと話が進展した」と安堵(あんど)したのでご紹介させていただきたい。

 広告代理店勤務の桜井は、駅で美大生の蓉一とぶつかり、仕事の資料をダメにされてしまう。「同じ資料があるので」と連れて行かれた蓉一の自宅は、古くて広い一軒家。無口で無表情な蓉一のことを桜井は苦手に思うが、なぜか気にかかり、たびたび蓉一の家を訪れるようになる。

 38歳の桜井の恋心を丁寧に描いているのが、私にはとても好感が持てる。桜井は彼女と別れたばかりの傷心で、腕はいいのに仕事への情熱も冷めかけていた。自分には熱意がないのだとあきらめかけていた桜井。それが、蓉一に会うたびに「このザワザワと不安な気持ちはなんだろう 彼の『空気』に触れる度に焦るのはどうしてだろう」と心揺れる。そしてある時、蓉一の笑顔をみて自覚するのだ。「どうしよう 他人に全(すべ)てを奪われるようなこの感覚を忘れていた(中略)こんなにも誰かを好きになることができるなんて 考えもしなかった」

 そう、自分の心なんて、全然自分の思い通りにならない。それは不惑の年に近くなっても同じこと。ふとしたことで心は嵐のようにかき乱されてしまい、年をとったからできることといえば、それを周りに悟られないようにすることだけ。日高は38歳の心に訪れた恋の嵐を不自然なく描いてみせた。

 1巻ではずっと桜井の視点で、蓉一の心が分からずやきもきしたが、2巻で蓉一のモノローグも出てくるようになり、ようやく二人の関係が進展するようだ。しかし、本作品の掲載は隔月刊「ルチル」で、コミックスの発行は年1冊ペース。しかも、「ルチル」はBL雑誌の中でもかなりソフトな方なので、もう話もじれったいし、発行もじれったいしで、ファンにはたまらない。1巻完結が多いBL界の中でも、私が次巻を心待ちにしている作品の一つだ。

プロフィール

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松尾 慈子(まつお・しげこ)

1992年朝日新聞入社。金沢、奈良支局、整理部、学芸部などを経て、現在、名古屋本社報道センター記者。漫画好き歴は四半世紀超。一番の好物は「80年代風の少女漫画」、漫画にかける金は年100万円に達しそうな勢いの漫画オタク。

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