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究極の「草食男子」30歳の恋 よろめき番長(依田沙江美)

2010年11月26日

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画像:「よろめき番長」 [作]依田沙江美(芳文社)「よろめき番長」 [作]依田沙江美(芳文社)

画像:「よろめき番長」(C)依田沙江美/芳文社拡大「よろめき番長」(C)依田沙江美/芳文社

画像:「よろめき番長」(C)依田沙江美/芳文社拡大「よろめき番長」(C)依田沙江美/芳文社

画像:「よろめき番長」(C)依田沙江美/芳文社拡大「よろめき番長」(C)依田沙江美/芳文社

 私の最愛の作家の一人、依田さんがまた新刊を出してくれました。最近とってもよく働いてますね、依田さん。雑誌「Dear+」(新書館)でも新連載が始まったし、うれしい限りです。この人が出した新刊は、私は必ず紹介いたします。すいません、偏愛ですから。よしながふみも羽海野チカも清水玲子も私は深く愛しているけれど、そんな大御所に私ごときの応援は無用でしょう。けれども依田さんは応援したいの! ボーイズラブ(BL)界から離れることなく描き続け、しかもエロが主眼になりがちなBL界にあってエロがとっても少ない。大丈夫か、大丈夫なのか。そんな心配から、私は毎回取り上げます。お許しください。

 人付き合いの苦手な若葉は、勤め先の日本茶専門店でフリーペーパーの記者・吉川と知り合う。若葉の社交性のなさは筋金入りで、行きつけの飲食店で顔を覚えられてしまうと「くつろげない」、吉川が食事に誘っても「気つかわないで」と拒絶。吉川の「好きです」という告白にも耳をふさいでしまう。今どきの「草食男子」どころか「野性の被食動物」という感じなのだ。

 若葉は極度の潔癖性で、ヒマさえあれば掃除しまくるのだが、その後恋人関係になった吉川が置いていったTシャツにまでアイロンをかける。ひとつひとつの描写に真実味があって、それがキャラたちに存在感を与えている。ちょっと病的な人間を描くのが得意な依田の腕が光る。

 そんな若葉は30歳で、対する吉川は7歳も年下。「我ながらこの不思議ちゃんのどこがいいんだか」と思いつつ何度もの拒絶にもめげずに押していくところはさすが23歳、若い! 若葉をめぐる恋敵として若葉の大学時代の友人・鳴海が登場し、吉川との初対面で「若い!」とげらげら笑う場面があるのだが、そうだよ〜あんまり若いと笑いたくなるよねえ。しかし、掲載誌「花音」の読者層は10代20代じゃないんだろうか。40歳の私は23歳に笑うけれど、「花音」読者の大半にとって「23歳」とは大人なんじゃないだろうか。こういうギャップがいろんなところにありそうで、私は依田さんを必死で応援したくなるんだよねえ。

 以前の連載作品「よるべなき男」は、高齢者介護が出てくるからか、贋作(がんさく)絵画を高く売って高跳びする話だからか、予告は出たのにコミックスは出ないまま。私はこういう事態が怖くて依田作品の掲載誌は必ず買って切り抜くようにしていたんだけど、今夏引っ越したら行方不明になってしまった。このままコミックスがでないときには、私は掲載誌をコピーするために国立国会図書館まで行く覚悟だ。オーバーワークで仕事が荒れることは望まないけれど、なにとぞ、コミックスにはしてください、依田さん。

プロフィール

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松尾 慈子(まつお・しげこ)

1992年朝日新聞入社。金沢、奈良支局、整理部、学芸部などを経て、現在、名古屋本社報道センター記者。漫画好き歴は四半世紀超。一番の好物は「80年代風の少女漫画」、漫画にかける金は年100万円に達しそうな勢いの漫画オタク。

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