現在位置:
  1. asahi.com
  2. エンタメ
  3. 映画・音楽・芸能
  4. コラム
  5. 漫画偏愛主義
  6. 記事

5時から9時まで(相原実貴)

2011年1月14日

印刷印刷用画面を開く

Check

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

表紙:「5時から9時まで From five to nine」[作]相原実貴(小学館)「5時から9時まで From five to nine」[作]相原実貴(小学館)

イラスト:「5時から9時まで From five to nine」(C)相原実貴/小学館拡大「5時から9時まで From five to nine」(C)相原実貴/小学館

イラスト:「5時から9時まで From five to nine」(C)相原実貴/小学館拡大「5時から9時まで From five to nine」(C)相原実貴/小学館

イラスト:「5時から9時まで From five to nine」(C)相原実貴/小学館拡大「5時から9時まで From five to nine」(C)相原実貴/小学館

 あけましておめでとうございます。今年も趣味全開で私のお気に入りを紹介させていただこうと思っております。どうぞよろしくお願い致します。

 本書は少女マンガの王道ともいえる「逆ハーレム」モノで、突如複数の男性にモテまくり始めた27歳の英会話講師・潤子が主人公。取り立てて取りえのない主人公が「私がなんでモテてるの? うれしいけど困っちゃう〜」となる、昔ながらの少女まんがの典型の一つだ。でも、21世紀ともなると、主人公は美人で英会話が得意な上智大学卒に進化する。それでも「アバクロでお買い物よ」とうそぶいた後で、「あんな高い服、ミエはってるに決まってるじゃん」とか、可愛いところもあって、愛すべきキャラクターとして描かれている。掲載誌がH系の少女まんが誌「Cheese!」なので、ヘテロ(男女)恋愛マンガが苦手な私はちょっと手に取るのがためらわれたが、いやいや、王道はやはり王道だけあって楽しい、ということを思い出させてくれた本書なのだった。

 潤子の夢は30までにガイド検定1級を取って、海外で仕事を続けて、外国人または海外駐在の日本人と結婚すること。ところが親の願いで見合いした相手は寺のお坊さん・星川高嶺。寺の嫁にはならない、と断固拒否する潤子に対し、高嶺は潤子を気に入って、潤子の教室に通い始め、誕生日には花を贈り、レッスンでもプライベートでも潤子がほかの男と一緒にいるのがいやだと告白する。

 この高嶺の直球だけれども不器用な愛情表現が、読んでいて身もだえするほどかわいらしい。潤子もそんなところにほだされて高嶺を憎からず思うのだが、潤子からの誘いの言葉が「結婚も花嫁修業も仕事辞めるのもお断りだけど、それでもいいなら寄り道していく?」なのだ。女性の側からホテルに誘い、しかも「結婚はお断りよ」なんて、女性が操を捧げる相手は結婚相手であるべしとされていた四半世紀前なら信じられないせりふだ。いやはや、昭和は遠くなりにけり…。いや、そんなことはどうでもいいんですけどね。 ところが、高嶺がその言葉を真に受けていう台詞が「あなたがワガママをし飽きるまで待ってあげます」。うわ〜なんて不器用な。女のキャリアプランを「ワガママ」なんて言う男は今どき結婚なんて出来ないよ〜と思うのだが、やはり潤子も逃げだしてしまう。正直いって、東大卒でイケメン、女性経験もそこそこありそうな高嶺が、ここまで捨て身で求愛することはなかろうと思うのだが、まあそれは置いておこう。

 潤子は高嶺のほかにも、大学時代からの飲み友達で潤子にとって気になる存在の商社マン三嶋、教室の生徒で女装男子のユキちゃんからもアプローチを受ける。潤子の同僚で三嶋を狙う22歳のまさこ、英会話講師で実はオタク女子のモモエ、同じく講師で金髪碧眼(けいがん)女たらしのアーサーと、英会話教室で男女7人の恋模様が繰り広げられる。

 日ごろボーイズラブばかりを読んでいる私が、久々にヘテロラブオンリーの少女マンガを読んでハマってしまった。「いい男に熱烈に迫られたい〜」っていう実はひそかに持っている願望を叶(かな)えてくれるファンタジーを読むのもなかなか快感なのね。普段ヘテロマンガを読むと、男性があまりにいい男に描かれていて嘘(うそ)くささを感じて冷めてしまうことが多いけど、本書は登場する男たちは全員イケメンなんだけれども、それぞれ、不器用でしかも寺の坊主だったり、へたれだったり、女たらしだったりと、欠点が人間らしく描かれていてそれが嘘くささを消しているのかも。めくるめくいい男との恋愛疑似体験、なかなかおすすめです。

プロフィール

写真

松尾 慈子(まつお・しげこ)

1992年朝日新聞入社。金沢、奈良支局、整理部、学芸部などを経て、現在、名古屋本社報道センター記者。漫画好き歴は四半世紀超。一番の好物は「80年代風の少女漫画」、漫画にかける金は年100万円に達しそうな勢いの漫画オタク。

検索フォーム

朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内 事業・サービス紹介