現在位置:
  1. asahi.com
  2. エンタメ
  3. 映画・音楽・芸能
  4. コラム
  5. 漫画偏愛主義
  6. 記事

明るさ一直線 全力で恋する年下わんこ 真昼の恋(草間さかえ)

2011年1月28日

印刷印刷用画面を開く

Check

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

写真:真昼の恋 [作]草間さかえ(心交社)真昼の恋 [作]草間さかえ(心交社)

 草間ファンにとって昨年はよい年だった。寡作な彼女がコミックスを3冊も出してくれた。今年もそうありますように、と願っても、これらのコミックスがまとまるまでに雑誌掲載から数えて4年、5年とかかっているので、難しいか。まあ、草間ファンはお預けには慣れているから大丈夫よ!

 草間は余分な線を排除した硬質な絵柄と、フリーハンドで描く背景など独特の画面構成、加えて叙情性のあるストーリーで、ボーイズラブ(BL)界で根強い人気を集めている作家である。ちと寡作なところがファンには辛いが、待っただけのかいがある作品をいつも提供してくれている。

 本書は暗さを描くのが得意な草間には珍しく、明るさ一直線のラブコメディー。年下で愛情表現過剰なハジメと、筋金入りの年上好きだった正午(まひる)のイチャイチャが楽しく描かれていて、読むとほおがゆるんでしまう。帯に「全力で恋する年下わんこと素直じゃない年下嫌い」とあるが、その通り。最近、BL界では犬のように揺るぎない愛情を注いでくれる年下男子=年下わんこの作品が多いような気がする。自分が恋する相手から脇目もふらずに愛されることが、女性の永遠なる願望だからだろうか。

 というわけで、年下わんこのハジメは、まひるが慕っている課長に嫉妬心丸出しにしたり、まひるに誕生日を教えてもらってその場でカレンダーに書き留めたりと、愛情がだだ漏れの行為をまひるの前でしてみせる。「多く惚(ほ)れた方が負け」なんて言葉はハジメの頭にはないらしい。現実には「こんな愛情は重すぎて、相手に引かれるのでは」とかいろいろ考えてしまいそうだが、その制約がないのが結局はファンタジーであるBLのいいところだ。

 一方で、年上専門だったはずのまひるも「年下なんかやっぱり嫌いだ 可愛いを武器にしやがって」とほだされる。ゲイであるために父親に否定されたまひるは、ファザコンゆえに課長の五十嵐を慕っていて、五十嵐の存在が2人の関係にいいスパイスになっている。五十嵐は2人の関係に気づきつつ「息子同然」とまひるをかわいがり、まひるはそれを喜ぶので、わんこのハジメとしては気が気じゃない。

 大人の漫画読みの方々には「深みがない!」と言われそうだが、時にはこういう他愛(たわい)もないストレートな愛情物語が読みたくなるのよ、40代にもなるとね。

 ところで、私は自宅近くの図書館にBL小説が多数そろっていることを最近ようやく知った。読んでみたかった本がある!

 しかし、BL漫画よりももっと露出度が高い男子の表紙イラストが描かれていることが多いBL小説を、書庫から出してもらって、さらに貸出窓口に持っていく、って二重の恥さらし!と思っていたのだが、先日とうとうやってみた。40代、怖いモノなし。あれほど男が胸をはだけた表紙だというのに、書庫担当の人も、受付の人も普通だった。

 しかし、本当にBL小説の表紙は肌率が高い・・・それが書庫から出てくるまで、どんな表紙か分からないというこのスリル。いや、久しぶりにドキドキしてしまいました。

プロフィール

写真

松尾 慈子(まつお・しげこ)

1992年朝日新聞入社。金沢、奈良支局、整理部、学芸部などを経て、現在、名古屋本社報道センター記者。漫画好き歴は四半世紀超。一番の好物は「80年代風の少女漫画」、漫画にかける金は年100万円に達しそうな勢いの漫画オタク。

検索フォーム

朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内 事業・サービス紹介