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他愛なく、だからこそきらきらと めくりめくる(拓)

2011年2月25日

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イラスト:(C)Taku/WANI BOOKS拡大(C)Taku/WANI BOOKS

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 帯に「岡山県倉敷市観光キャンペーン採用作品!!!」とある。「おお、倉敷といえば昨年、大原美術館を訪れたなあ」と手に取った。最近こういう地域振興を目的とした企画モノのコミックが出てるなあ。本紙の読書面でも「コミックいわて」(メディア・パル)が紹介されていたし、以前コラムで紹介した「ゴーガイ! 岩手チャグチャグ新聞社」(飛鳥あると・講談社)も佳作だったし。いやいや岩手ばかりでなく、本作も、初々しい少年少女たちを描いていて、のどかな倉敷の風景ともあいまって、なかなか雰囲気のある作品に仕上がっている。

 倉敷を舞台に高校生達のなにげない日常をオムニバスで描いている。第一話は「お花見」を軸にした女の子の友情物語。「お花見いこう!」と咲は誘うが、夏は「委員会の仕事があるから」とつれなく断る。お互いに、「相手といっしょに行きたいのに」と思いつつ、桜の季節は過ぎてしまう。やっといっしょに行けるようになり、葉桜の下の花びらで楽しみつつ「こういうのもたまにはいいよね」、と2人は笑う。そう、2人で行けたから楽しい。

 どのお話もこういった、あえていうなら他愛(たわい)ない、だからこそきらきらとした青春の日々が描かれている。雨でぼさぼさになるくせっ毛が大嫌いな女の子が、好きな男の子に「俺からみりゃ すげーうらやましい」と言われて、天にも昇る気持ちになること。初めて学校をさぼった真面目女子が、さぼり常習の男の子と街でばったり出会って一日を過ごすこと。大きな事件はなくとも、毎日が輝いている少年少女たち。いや、うらやましい。

 しかし、それがみな標準語で語られているのはなぜなんだろう? せっかく倉敷舞台なのだから、岡山弁にすればもっと地域らしさがでてよかったのでは? これだと単なる「田舎に住んでるから、スレてない若者たち」って感じになっちゃうよ? 瀬戸内の穏やかな気候と、都会でもないけど極端な田舎でもない規模の街であってこその、この少年少女たちの穏やかさなのではないの? それを示すなら、ぜひ言葉も岡山弁で!

 ちなみに私が一点思うのは、「今どきの高校生男女はこんなに仲がよいものなの?」。街でばったりあって、そのままいっしょに海に行ったり、学校をさぼっちゃったり。20年前の高校生からは信じられないんですが。女の子が傘を盗まれちゃって困っていたら男の子は「一緒に入ってく?」なんて声かけられるんですか? そんなの、20年前なら女慣れした男の子しか無理だったんだけど、今どきの高校生男子なら出来るんですか?

 しかし、この物語と比べれば、私の高校生活は乾いていたなあ。1年のころは普通に部活や生徒会もやったが、2年からは勉強した記憶しかない。高校2年の春の時点で偏差値43だったのだから、そりゃ勉強もするさ。当時の女の子なら知らぬ者のなかった超人気アイドルグループ「光GENJI」を知らず、「ローラースケートはいて踊るん〜? うそお〜」と言っていたわ。ちなみに、広島弁では「うそ」の「そ」にアクセントで、「お」は下がる。

 いや、ホントに彼らの青春はきらめいていて、本当にうらやましい。でも、たまには勉強しようね! 勉強した方が職業選択の幅が広がるからね!

プロフィール

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松尾 慈子(まつお・しげこ)

1992年朝日新聞入社。金沢、奈良支局、整理部、学芸部などを経て、現在、名古屋本社報道センター記者。漫画好き歴は四半世紀超。一番の好物は「80年代風の少女漫画」、漫画にかける金は年100万円に達しそうな勢いの漫画オタク。

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