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日々の営みをいとおしく 続・星守る犬(村上たかし)

2011年3月25日

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表紙:続・星守る犬 [作]村上たかし(双葉社)続・星守る犬 [作]村上たかし(双葉社)〈「続・星守る犬」を検索〉

写真:(C)村上たかし/双葉社拡大(C)村上たかし/双葉社

写真:(C)村上たかし/双葉社拡大(C)村上たかし/双葉社

 東日本大震災にて被害にあわれた方々には、心からお見舞い申し上げます。支援のために自分にも何かできることはないか、と考えましたが、結局は「自分の仕事をきちんとやることが第一」と思い至り、このコラムを書いています。取り上げる作品にも悩んだ末、以前に取り上げた「星守る犬」の続編に決めました。前作と同様に、人々の力を、愛情を、人の存在はかけがえのない存在であることを教えてくれます。

 自然の圧倒的な力の前には、人間は無力です。しかし、そこで営まれる日々の生活は、なんと美しくいとおしいものなのでしょう。被災された方々にも、そんな日々が一日も早く戻ってくるよう、心からお祈りしています。

    ◇

 前作「星守る犬」は無職で家族もなくしたお父さんと愛犬ハッピーとの旅路を描いていた。「泣けた本第1位」など数々の賞を受賞、映画化もされ今年6月に公開される。本作には、ハッピーの弟犬の視点で描かれる「双子星」と、お父さんが旅の途中で拾った少年が主人公の「一等星」、そしてエピローグが収録されている。

 描かれるのは孤独と、そして魂の再生である。死にかけていたハッピーの弟犬を拾ったのは、近所で評判の偏屈なおばあさん。「冥土の道連れ」と思って拾った犬は、障害を抱えながらも大きくなっていき、いつしか彼女と周囲の人々との縁を結んでいく。

 前作では拾ってくれた「お父さん」の財布を盗んで逃げた少年。きっと読者の多くが、この少年のことを気にかけていただろう。無事おじいちゃんのもとへ行けるだろうか、それともおじいちゃんのところへ行くといっていたのも嘘だろうか、ただの恩知らずの少年なんだろうか。今回の「一等星」では、少年が哲男という名前で、母親の愛情すら得られずに生きている様子が描かれる。ペットショップで万引きしたパグ犬を旅の相棒に、哲男はなんとか北海道の祖父宅へたどり着く。そこで彼は「一番に愛してくれる人」を得る。

 「双子星」「一等星」で、人の輪は広がっていき、エピローグですべてが集約される。桜が舞い散るラストシーンに、読者は心が満たされたような思いになることだろう。

 「星守る犬」のラストには涙が止まらなかった私だが、本作のラストには心温まる思いがした。人は必ずだれかとつながっている。その温かさを感じさせてくれる作品なのだ。

プロフィール

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松尾 慈子(まつお・しげこ)

1992年朝日新聞入社。金沢、奈良支局、整理部、学芸部などを経て、現在、名古屋本社報道センター記者。漫画好き歴は四半世紀超。一番の好物は「80年代風の少女漫画」、漫画にかける金は年100万円に達しそうな勢いの漫画オタク。

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