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女ふたりの子育てグラフィティ オハナホロホロ(鳥野しの)

2011年4月22日

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イラスト:オハナホロホロ[作]鳥野しの(祥伝社)1〜2巻(以下続刊)拡大オハナホロホロ[作]鳥野しの(祥伝社)1〜2巻(以下続刊)「オハナホロホロ」を楽天で検索

イラスト:(C)鳥野しの/祥伝社フィールコミックス拡大(C)鳥野しの/祥伝社フィールコミックス

イラスト:(C)鳥野しの/祥伝社フィールコミックス拡大(C)鳥野しの/祥伝社フィールコミックス

 前回も書きましたが、引っ越しました。神戸の元町駅の山側です。「西村しのぶの神戸・元町“下山手ドレス”」(角川書店)の舞台にほど近いというのに、オシャレな西村ワールドとは重なる部分がまったくありません。西村いわく「心に、ドレスを」。この数年、ワンピースすら着たことがない私にドレスは無理なのか。

 そして何より戸惑ったのは、リアル本屋さんでの情報量です。これまでは近所のごく小さな本屋さんにばかり通っていたので、巨大書店に行くと、もうあっぷあっぷ。平積み本がいっぱいで、それをチェックするだけでくたびれ、あふれるポップ(書籍の紹介板)に「もう、ごちそうさま」な気持ちになる始末。私の好みを知るかのような、そこに行けばたいていの私の欲求が満たされた、あの小さな本屋が懐かしい……。いや、慣れればどこの本屋さんもパラダイスなんですけどね!

    ◇

 さて、本書は帯にあった羽海野チカの推薦文で購入を決めた。少年棋士漫画「3月のライオン」で大人気の羽海野のエース兼チーフアシスタントだそうだ。確かに、絵柄が少し似ている。そして話の雰囲気も。でも、そりゃ近くにいれば影響は受けるよね、ってことで。羽海野作品にも通じるところがある、人間味あふれる登場人物たちが織りなす同居生活グラフィティだ。

 翻訳家の麻耶(まや)は、シングルマザーのみちる、その息子のゆうたと暮らしている。5年前、ふたりは同性の恋人同士として同棲していたが、みちるは突然麻耶の前から姿を消していた。今回の同居は「色恋抜き」の約束。不器用な女性二人とゆうたの三人暮らしに、ゆうたの父親と縁があったらしい階下の住人ニコが加わって、ドタバタながらも愛情あふれる日々が続いていく。

 バンド活動やたばこがやめられず、母親らしくなりきれないことにジレンマを感じるみちる。しっかり者にみえて、いつも不安にさいなまれている麻耶。ゆうたを中心にした三人家族のような関係を築きつつも、「しょせん他人でしょ」という他人のつぶやきにもみちるの心は乱れてしまう。みちるたちが不在の時に高熱に倒れる麻耶は(こんな状況で)「呼べる名前のひとつもないなんて」と嘆く。家族のようにつながっていながら、家族になりきれないから、それぞれが不安を抱えている。孤独と不安、その一方で支え合いと信頼、友情と愛情が描かれる。

 中心人物の女性二人は元恋人同士ではあるが、決して「百合モノ」ではない。描かれるのはホームドラマの温かさと、独立して生きる者の孤独だ。骨太のドラマというわけではないが、ふとしたとき、何度も読み返してしまう。不思議な魅力をもった作品なのだ。

プロフィール

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松尾 慈子(まつお・しげこ)

1992年朝日新聞入社。金沢、奈良支局、整理部、学芸部などを経て、現在、大阪編集局記者。漫画好き歴は四半世紀超。一番の好物は「80年代風の少女漫画」、漫画にかける金は年100万円に達しそうな勢いの漫画オタク。

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