現在位置:
  1. asahi.com
  2. エンタメ
  3. 映画・音楽・芸能
  4. コラム
  5. 漫画偏愛主義
  6. 記事
2011年6月17日
このエントリーをはてなブックマークに追加
mixiチェック

漫画偏愛主義

想定外にシビレるのが子育ての喜び ひねもす暦(おかざき真里)

文:松尾慈子

表紙:ひねもす暦[作]おかざき真里(マガジンハウス)
拡大ひねもす暦[作]おかざき真里(マガジンハウス) 「ひねもす暦」を楽天で検索

イラスト:(C)おかざき真里/マガジンハウス拡大(C)おかざき真里/マガジンハウス

イラスト:(C)おかざき真里/マガジンハウス拡大(C)おかざき真里/マガジンハウス

 前々回でちらりと紹介した、人気漫画家おかざき真里のコミックエッセーである。子ども3人を育てながら、何本もの連載を抱えるママ漫画家おかざきの日常を描いている。1ページごとの読み切りで、カラーの紙面でみる柔らかな色彩が美しい。初出は信濃毎日新聞くらし面。

 しっかり者の長女6歳、戦隊モノ大好きの長男3歳、末っ子として「女王」のように振る舞う次女1歳と、パパとママの5人家族。夏は水遊び、冬はスキーと、子どもとの生活は季節感にあふれている。食洗機にリモコン、洗濯物のポケットに小石と、困らされることはいろいろあるが、子どものいる生活はどこかおかしみがある。おかざきの自画像が、長い耳のあるテレタビーズに似た生物に描かれているのも親しみやすい。

 私が特に好きなのは、次女ソラのエピソード。どれもおかしみを感じるのだが、一番は、サンマの話だ。モノの適材適所にこだわるソラは、絵本は本棚に、お姉ちゃんのお箸は食事中でなくてもお姉ちゃんに! そして、買ってきたサンマが金魚鉢につっこまれていたときには、ママは「ありなの これはありなの?と脳がシビレた」。

 いや、本当に子どもって大人が予想もしない行動をするものなんだなあ。そして、秩序を重んじる人にはその想定外ぶりがきっと許せないのだろうなあ。日本って子どもを電車に乗せただけで白い目でみられるような雰囲気があるもんなあ。私の周囲でも、海外生活の経験がある女性たちは、みな口をそろえて「子育てするなら日本以外がいいわ」という。日本ももっと子どもに寛容な社会にならないと、出生率はあがらないと思うのだが。

 そして驚きは、たくさんの仕事を抱えながら、おかざきは1、2人目とも乳児期には保育園に入れられず、乳児を抱えながら仕事をこなしていたのだという。確かに、漫画には乳児をおんぶする場面が多々登場する。そのがんばりには脱帽するほかない。しかし、これほど売れっ子の漫画家が認可保育園に入れないのだとしたら、東京都の認可保育園に子どもを入れられるのはどんな人なのだろうか。いや、漫画家だから「自営業」として入園の優先順位が低くなるのかもしれないが、しかし! やっぱりもっと日本はがんばらないと出生率あがらないよ〜!

    ◇

 さて余談だが、私が買ったこの本は遠方の友人に貸してしまっていて返却のめどがたたなかった。今回コラムで書くにあたって、ダメもとで近所の図書館で探したら、育児関連本コーナーにありました! ありがとう、神戸市立中央図書館!

プロフィール

写真

松尾 慈子(まつお・しげこ)

1992年朝日新聞入社。金沢、奈良支局、整理部、学芸部などを経て、現在、大阪編集局記者。漫画好き歴は四半世紀超。一番の好物は「80年代風の少女漫画」、漫画にかける金は年100万円に達しそうな勢いの漫画オタク。

検索フォーム

朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内 事業・サービス紹介