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2011年7月1日
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漫画偏愛主義

ピュアに恋する箱娘 キュビズム・ラブ(松本テマリ、芝村裕吏)

文:松尾慈子

表紙:キュビズム・ラブ[作]松本テマリ、芝村裕吏(エンターブレイン)拡大キュビズム・ラブ[作]松本テマリ、芝村裕吏(エンターブレイン)「キュビズム・ラブ」を楽天で検索

イラスト:(C)松本テマリ、芝村裕吏/エンターブレイン拡大(C)松本テマリ、芝村裕吏/エンターブレイン

イラスト:(C)松本テマリ、芝村裕吏/エンターブレイン拡大(C)松本テマリ、芝村裕吏/エンターブレイン

 「わたし、箱です。それでも、好きになってくれますか――?」。帯にある言葉に目が釘付けになった。確かに、箱だ。箱男?(by「進ぬ!電波少年」日本テレビ系)と懐かしいことを思い出してしまったが、どうも違うらしい。「究極のラブストーリー」とある。

 一読して、驚愕。メインの登場人物が3人、というか1巻では2人と1箱、場面は主に1部屋、出てくる顔といえば、主人公の思い人・篠田ばかり。そして、この設定でラブ、そしてコメディーなのだ! しかし、それでも愛らしい松本テマリの絵柄と、話のおもしろさに引き込まれてぐいぐい読まされてしまう。まさに驚愕。

 中学生のノリコは、事故にあって脳だけが生き残り、箱になった。篠田はノリコを担当する医師なのだが、コミュニケーション力が低く、ノリコの恋心にまったく気づかない。体はなくとも自由に話せる、視覚も聴覚もあるノリコは、担当医である篠田への思慕を募らせていく。篠田は仕事としてノリコの体調に気を遣うのだが、距離が近づくと、「顔近いです先生」とノリコは焦ってしまう。ノリコの感情が高ぶった様子を解析しようと篠田が脳波計を見ると「脳波見ないでください」。だって焦った理由は篠田がノリコを「かわいい」と言ったから。「(脳波が)乱れてるな」「だから見ないで!」

 ノリコは箱だから、当然表情もない。それを、作画の松本は顔を描くことなく表情を表してみせる。ノリコが感情を表せるのは、言葉か、2話目で篠田がノリコにプレゼントした白い息を吐く機能ぐらいなのだ。松本はその息と言葉、そしてかつてのノリコの体を描くことで感情を豊かに表現している。

 原作者の芝村によると、当初目指したのはピュアな恋愛物だったのだそうだ。ならば人物は少なく、中学生と二十代男性が自然に仲良くする環境で、などと考えていくと、こういう設定になったんだとか。いや、これは、ピュア、ピュアか〜〜!?

 読むうちにどんどん箱がかわいく見えてしまう。それが原作者の希望なのだとか。掲載誌は隔月刊「コミックビーズログ キュン!」。次巻がでるのはかなり待たねばならないのだろうな……。

    ◇

 ここから先は、ごくごく私的な感想ですみません、このシチュエーション、以前どこかで聞いた話を思い出してしまう。確か映画「ジョニーは戦争へ行った」だったか。戦闘で四肢を失い、五感のうち触覚のみが残った兵士が、唯一自分で動かせるのは頭だけ。寝かされたベッドのヘッドを頭でたたき、周囲の誰も分からないモールス信号で意思を伝えようとむなしい努力を続けるのだ。ほら、設定をちょっと変えるだけでとっても怖い!

 本作はSFラブコメだから、きっとノリコにはかわいい体ができるんだよね!?お願い!お願いだから本作も早くキュートな展開にして〜〜!!

プロフィール

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松尾 慈子(まつお・しげこ)

1992年朝日新聞入社。金沢、奈良支局、整理部、学芸部などを経て、現在、大阪編集局記者。漫画好き歴は四半世紀超。一番の好物は「80年代風の少女漫画」、漫画にかける金は年100万円に達しそうな勢いの漫画オタク。

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