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2011年12月2日
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漫画偏愛主義

やはりBLは楽しくなくては 深呼吸(木原音瀬)

文:松尾慈子

写真:「深呼吸」作:木原音瀬/イラスト:あじみね朔生(リブレ出版)拡大「深呼吸」作:木原音瀬/イラスト:あじみね朔生(リブレ出版)〈『深呼吸』を商品検索〉

 11月25日、東大・駒場祭での「BL Tea time」、行って参りました。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。私にとっては非常に楽しい会になりました。今更ながら解説しますと、BLとは、BOYS LOVE。要するにホモ漫画のことです。それをテーマに東大で語るとは、東大の懐の広さを感じます。

 ご報告しますと、60人ほどの方が参加くださり、男女比は3:7ほど、そして大学生とおぼしき方は半数ほどで、私と同年代や私より上と見えるお方もいらっしゃいました。しかし、このコラムを見て参加という方は、アンケートによるとお一人だけでした。みなさん、チラシやツイッター、SNS(ソーシャルネットワークサービス)でごらんになったそうで、情報伝達の世代ギャップをしみじみ感じました。

 第一部は私が勝手に萌えを20分語りまくるというものだったのですが、私が次々挙げるBL作品のタイトルにみなさん笑いやうなずきで答えてくださり、かつ「つぶれる前のビブロスで」という発言に会場から笑いがもれるという、「みんながBLの知識を共有している中で話せる」幸せな空間でした。いや、あくまで私だけが楽しかったのかもしれませんが。こんな幸運に遭遇することはもうないことでしょう。ちなみにビブロスというのは、BL界最大手の出版社でした。

 一緒にお話しした江路みそ先生は、主に子供向けアニメの二次創作(パロディ)をする方なのですが、自己紹介で「壁の人でなくてすみません」というと、場内爆笑。「壁」の意味が分かる人が来てるんですね。日本最大の同人誌即売会・コミックマーケットにおいて、人気同人誌作家は買い手の列をさばきやすくするために「壁」側に配置されるのですよ。江路先生は壁ではなく普通の配置なので「人気サークルの人じゃなくてすみません」という意味です。なんて濃密な空間だったのでしょう。私は二次創作は読み専門なので、描き手の気持ちを聞けるのは新鮮でした。主催の東大見聞伝のみなさまには深く感謝いたします。

 残り行数も少なくなってまいりました。今回はBLでないといけません。というわけで、今回はBL小説です。私がBL小説で唯一読んでいる作家の木原音瀬。彼女にしか書けない、痛い設定がたまらないのです。多くの場合、二人の関係はお互いに相手をよく思ってないマイナスの状態から始まり、いつしかそれがプラスにねじれていくという設定。今回も自分をリストラした元上司が、アルバイト先まで訪ねてきて、主人公はざわつきを覚えるという始まり方です。そしてだんだんとお互いの心理がほぐれていく、人の心理の不思議さを木原は淡々と書いてみせます。

 私はこの作品、初出の時に読んでいるはずなのだが、たったの5〜6年で内容をすっかり忘れ去っていて、まったく新作という気持ちで読めました。自分の記憶力が恐ろしいです。そして書き下ろしの続編は、BLの定番、思いっきり甘い生活が描かれています。40代と30代、大人の2人のラブラブというのは、読んでいて、「そうなのよ、恋に落ちるのに年齢は関係ないのよ」と思わせてくれます。BLというのは、やはり楽しくなくてはね。

プロフィール

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松尾 慈子(まつお・しげこ)

1992年朝日新聞入社。金沢、奈良支局、整理部、学芸部などを経て、現在、大阪編集局記者。漫画好き歴は四半世紀超。一番の好物は「80年代風の少女漫画」、漫画にかける金は年100万円に達しそうな勢いの漫画オタク。

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