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2012年1月27日
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漫画偏愛主義

家庭大事の主婦をモテ男が誘惑 ふれなばおちん(小田ゆうあ)

文:松尾慈子

イラスト:ふれなばおちん[作]小田ゆうあ(創美社)拡大ふれなばおちん[作]小田ゆうあ(創美社)〈『ふれなばおちん』を商品検索〉

イラスト:(c)小田ゆうあ/創美社発行 集英社発売拡大(c)小田ゆうあ/創美社発行 集英社発売

イラスト:(c)小田ゆうあ/創美社発行 集英社発売拡大(c)小田ゆうあ/創美社発行 集英社発売

 珍しく、ヘテロ恋愛漫画です。しかも、掲載誌はレディース誌「月刊オフィスユー」。筆者の代表作は、日和見主義を廃し、世の中にはっきりとモノを言う主人公が人気を博した「斉藤さん」(創美社)。観月ありさ主演でドラマ化もされたから、ご存じの方も多いだろう。

 ところが本作は、なんと、もっさい人妻が主人公。髪はぼさぼさ、娘の体操着をお下がりにして着てしまうなど、服装にも気を遣わない。しかも小太り。自分のことより家族を優先する心根こそ美しいが、外見は美しくないのだ。この平凡な主婦の日常に、波紋を投げかける一人の男性が登場する。

 主人公の専業主婦・上条夏は、夫と娘、息子の4人暮らし。家族の幸せを最優先に考えて生きてきたけれど、中学3年で思春期を迎えた娘には、「おかあさん それでも女?」と拒絶される。夫も「女だろ」とあきれ顔だ。

 いや〜、家族のために女を捨てて尽くしてきたのに、それはないよねえ。ところがあまつさえ、この夫は会社の同僚の、劇団所属のいい男・佐伯に「うちの妻を誘惑してくれないか」と提案する。ダンナ〜えらい自信だねえ。「少しでも、妻に女を取り戻して欲しい」って気持ちからなんだろうけど、佐伯には「『上条夫妻』とかいて、『平和ボケ』とよませるか」ってツッコまれてるよ!? モテ男に妻を誘惑するように頼むなんて、警戒心がないにもほどがあるよ。夫というあなたの地位は、将来にわたって約束されたものじゃないのよ。

 夏の娘は、ちゃんと佐伯に警戒心を持っているのが好ましい。そうそう、女の子は、きちんと危険を見分けるものよね。夜中に佐伯の家まで夏に届け物をさせようとする父に、娘が「お母さんも一応、女」と指摘するのは、正しい。日常が壊れるかもという危機感を持たない大人に囲まれて、一番正しいのは娘ではないか?

 正直言って、物語の先行きが見えなくもないのだが、それはそれで楽しめる。佐伯の猛アタックを受けて、夏がどう変化していくのか。ダンナはちゃんと危機を察知し、かつ自分は妻に大事にされてきた幸せな立場であったことを認識できるのか。これからが楽しみだ。

 しかし、ネット書店でみると、本書にはまったくレビューが書かれてない! なんで? 「斉藤さん」と全然路線が違うから? とりあえず1巻の表紙が夏の半裸姿だから、一般の人は手に取るのがためらわれるわなあ。今のところは残念ながら(?)、健全漫画でありますよ。表紙に偽りあり。なのでぜひ手にとってみてください。

プロフィール

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松尾 慈子(まつお・しげこ)

1992年朝日新聞入社。金沢、奈良支局、整理部、学芸部などを経て、現在、大阪編集局記者。漫画好き歴は四半世紀超。一番の好物は「80年代風の少女漫画」、漫画にかける金は年100万円に達しそうな勢いの漫画オタク。

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