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2012年6月15日
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漫画偏愛主義

文通を通して距離縮める二人 成長痛(梶ヶ谷ミチル)

文:松尾慈子

写真:成長痛 (c)梶ヶ谷ミチル/祥伝社拡大成長痛 (c)梶ヶ谷ミチル/祥伝社

写真:(c)梶ヶ谷ミチル/祥伝社拡大(c)梶ヶ谷ミチル/祥伝社

写真:(c)梶ヶ谷ミチル/祥伝社拡大(c)梶ヶ谷ミチル/祥伝社

 久々にボーイズラブ(BL)を取り上げてみたい。いや、この遠距離恋愛と文通というさわやかさ。性描写が濃厚になりがちなBL界の中ではとっても貴重だ。でもBLがおイヤな方はスルーしてください。

 まずは帯の「文通恋愛。」に心惹かれた。時代モノかと思ったら、いやいや、現代モノ。そして「年下チビ少年×田舎の文系男子」。これが手に取らずにいられようか。ちなみに、BLにおいて「×」と表示された場合、先に書かれた方が男役、あとが女役を意味します、念のため。私は年下攻めが好物です。

 田舎の高校に合宿でやってきたすばるが、図書室で2つ年上の夏目に出会う。なぜか夏目に会うたびに動揺するすばる。そして合宿の終わり、携帯を持たず、長電話も嫌いな夏目から「手紙を書いてよ」と言われる。

 すばるの身長は当初164センチで夏目より低かった。最後には176センチ。身長と共に、だんだんと心も大人になっていくすばるの成長が丁寧に描かれる。

 夏目に恋心を抱く自分に向き合えず、夏目に内緒で東京に逃げ帰ってしまう。夏目が手紙をくれるのに、嫌われたと思いこんで読むことさえ出来ない。それでも何度も連絡をくれる夏目とようやく会って、自分の幼さが夏目を傷つけていたのだと知る。

 「どんだけ俺 情けないんだよ 自分のことしか考えないで ただのガキじゃん もっと大人になりたい ならなきゃダメだ」

 夏目の飾らない、実直な性格も好ましい。動揺しているだろうすばるの心を思いやって、返事が来ないまま手紙を出し続ける。すばると一緒のときに、友達に誘われても「ごめん今日パス」ときっぱり。こういう、率直な愛情表現ができる人が結局は愛を得るのだ。

 メールでもない、文通という時間のかかるツールが、かえって二人の感情を育てていく。二人が時代錯誤というわけでもなく、すばるは東京の子らしく、女の子たちも含めたグループでクリスマスはカラオケに繰り出すし、すばるも受験勉強に励む普通の受験生だ。相手の交友関係を知らない分、やきもきもする。そんな中でも二人は少しずつ心の距離を縮めていく。

 ちなみに、この作品で著者を知った私は、早速デビューコミックス「放課後の不純」を買って読んでみた。いい。確かにいいよ。すごくいい。でも、決して過激ではないが、高校生の性描写が多い。オバサンとしてはどうも抵抗があって、こちらの「成長痛」を推薦させてもらいたい。

プロフィール

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松尾 慈子(まつお・しげこ)

1992年朝日新聞入社。金沢、奈良支局、整理部、学芸部などを経て、現在、大阪編集局記者。漫画好き歴は四半世紀超。一番の好物は「80年代風の少女漫画」、漫画にかける金は年100万円に達しそうな勢いの漫画オタク。

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