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2012年8月24日
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漫画偏愛主義

悩み多き中学生たちに向き合う ソフテン!(板羽皆)

文:松尾慈子

イラスト:ソフテン![作]板羽皆(芳文社)拡大ソフテン![作]板羽皆(芳文社)〈『ソフテン』を検索〉

イラスト:(c)板羽皆/芳文社拡大(c)板羽皆/芳文社

イラスト:(c)板羽皆/芳文社拡大(c)板羽皆/芳文社

 「サムライカアサン」(集英社)の板羽皆が、自分の中学時代の女子ソフトボール部経験を下敷きにして描いた、青春群像ギャグマンガだ。部員は9人、どんなに下手でもレギュラーになれる、という設定は、板羽の経験そのものらしい。

 マンガでは、ピッチャー胡桃人美とキャッチャー薩間真麻というバッテリー以外は、全員ツッコミどころ満載のキャラクターが登場している。どの子もほかの部でうまくいかず、流れ着いた先が女子ソフト部。すぐキレるヤンキー、いつも何かを食べている女子、いつもマイナス思考の黒地さん、などなど。みんな中学1年や2年、若者らしく、常に悩んで空回って自意識過剰だ。それを、ちょっといわくがありそうな中年監督が、自らを落としつつ、最後には彼女たちを納得させたり、自信を取り戻させたりしてくれる。

 黒地さんの「どうしたら私、役に立てますかね」という問いに、監督は「まーそれは 生きてたら思いつくんちゃう?」という誠にまっとうな回答をしている。そりゃそうだ。そこで「あなたは生きてるだけでいいのよ」なんて言ったら、その場は丸くおさまるかもしれないが、結局、黒地さんはまた同じ悩みに苦しむことだろう。「自分に価値はあるのだろうか」。誰しもふと頭をもたげる疑問だが、そうか、「そんなん、生きてみて見つければいいんちゃう」ということか。

 そんなこんなで、校務員でやもめの中年男性は、黒地さんのスカウトで監督となり、問題児ばかりのソフト部を生まれ変わらせる、とはいかないが、チームワークのあるまとまりのある部に変身させる。先生やそれまでの監督に「お前らはダメだ」と否定され続けてきた部員たちは、新しい監督に自分たちのやり方や性格を尊重されることで自信をつけてくる。

 悩み多き中学生に、真剣に対応してくれる大人が身近にいるということがマンガの中で示されるだけでも、なんだかほっとする。掲載誌は「まんがタイム」。

 さて、以下は、私がうじうじと黒地さんのように「生きている価値があるのだろうか」と悩んだ時にとる対処法である。夜、一人になって、その日あった、もしくは過去にあったつらい出来事が頭に次々浮かんでくる。自分に価値なんてない、もしくは生きていくのがしんどいと思う、そういうときは、必ず、その記憶の再生を無理やりにでも終わらせて、「そんな環境を一人で生き延びた、なんて私は素晴らしい!!」と必ず思うようにするのだ。つらい記憶が再生されるたびに必ずこれをして、マイナスの思考を中断させる。10年近く続けていると、いつしか私の脳内では、つらい記憶が呼び起こされた後に、「でも、私って素晴らしい!」と、記憶の再生と自己肯定の言葉がセットになって浮かび上がるようになったのだ。もちろん、言葉だけで、気分が浮上しないこともある。だが、まあマイナス思考の方はお試しあれ、結果は10年後にでるでしょう。

 しかし、この方法は、問題がすでに過去のものである時にしか有効ではないので、ご注意あれ。精神論で乗り越えられない問題も、現実社会には多々あるので、その時は解決法を自分で考えるしかない。その場合、問題が学校にあるなら、学校に行かない、という手もアリだ。中学校で日々緊張を強いられた私としては、昨今の報道をみて、切実にそう思う。

プロフィール

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松尾 慈子(まつお・しげこ)

1992年朝日新聞入社。金沢、奈良支局、整理部、学芸部などを経て、現在、大阪編集局記者。漫画好き歴は四半世紀超。一番の好物は「80年代風の少女漫画」、漫画にかける金は年100万円に達しそうな勢いの漫画オタク。

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