現在位置:
  1. 朝日新聞デジタル
  2. エンタメ
  3. 映画・音楽・芸能
  4. コラム
  5. 漫画偏愛主義
  6. 記事
2012年9月7日
このエントリーをはてなブックマークに追加
mixiチェック

漫画偏愛主義

フランスに引っ越した一家の物語 パリの鈴木家(かわかみじゅんこ)

文:松尾慈子

イラスト:パリの鈴木家[作]かわかみじゅんこ(イースト・プレス)拡大パリの鈴木家[作]かわかみじゅんこ(イースト・プレス)〈『パリの鈴木家』を検索〉

イラスト:(c)かわかみじゅんこ/イースト・プレス拡大(c)かわかみじゅんこ/イースト・プレス

イラスト:(c)かわかみじゅんこ/イースト・プレス拡大(c)かわかみじゅんこ/イースト・プレス

 パリで結婚して出産、エッセーマンガ「パリパリ伝説」(祥伝社)で人気のかわかみじゅんこ。最新作は日本からパリに引っ越した一家の13歳の長男・ヒロヤを主人公にした長編マンガだ。最初に仏語版で発行され、今回、新たに日本語版として出たそうだ。

 ヒロヤは父の転勤でパリへ引っ越す。16歳の姉・流美は前向きで「日本のギャルって今世界で超流行(はや)ってんだから」と、転校初日に高校の制服で登校、「これでイキナリ人気者! 彼氏ゲット!」。確かに、恋人ができればその土地の言葉をすっごく早く習得できるっていうものね。

 一方、やや内気なヒロヤはなかなか友達ができない。言葉が分からないから、授業にもついていけない。もんもんとした日々を過ごしつつも、放課後にフランス語を教えてくれるアラビア少女ファティマ、日本人の母とフランス人の父を持つとらお、男2人で同居してよく分からない会社をやっている隣人などなど、多様な人たちが関わってきて、少しずつパリを知っていく。

 そもそもこの作品は、テレビ局のサイトでの企画で「日本とフランスのカルチャーギャップをマンガを通じて見てもらおう」というものだったそうだ。そういうわけで、街のパン屋で500ユーロ札を出したら閉め出されたり(約5万円という高額紙幣で、おつりがないから)、成績の悪かった流美は容赦なく留年になったり、ファティマの兄弟が11人だったりと、日本との文化の違いを知らせる内容になっているのだ。

 この作品を読むとなんだかパリの雰囲気が伝わってくるような気がする。私は以前、旅行でパリに立ち寄り、フランス語が話せない私に優しくしてくれたのは移民らしき方々だけ、という体験をしたので、私にとってフランスは怖い国だった。かわかみ作品と、以前アサヒコムでおやつコラムを書いていたおやつ研究家・多田千香子ちゃんのおかげで、パリはぐっと親近感を持てる国になったよ。

 2巻は絶賛執筆中だそうだ。契約書にある締め切りを半年以上過ぎているとのこと、ぜひ忙しい育児の合間をぬって、執筆をがんばって欲しい。

 ちなみに、かわかみのあとがきによると、フランス、ベルギーでは単行本のことを、音楽みたいに「アルバム」というのだそうだ。フランスのカラーコミック「ボンデシネ」(BD)は一冊ごとの描き下ろしで、BD作家たちは芸術家として扱われるのだという。へ〜。漫画家は漫画家で、芸術家とはならないのか。日本でもそうなんだけど、不思議だなあ、と素朴に思った。

プロフィール

写真

松尾 慈子(まつお・しげこ)

1992年朝日新聞入社。金沢、奈良支局、整理部、学芸部などを経て、現在、大阪編集局記者。漫画好き歴は四半世紀超。一番の好物は「80年代風の少女漫画」、漫画にかける金は年100万円に達しそうな勢いの漫画オタク。

検索フォーム

朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内 事業・サービス紹介