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2012年9月21日
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漫画偏愛主義

どこまでもハイテンション 僕の彼女は女子が好き(門地かおり)

文:松尾慈子

イラスト:僕の彼女は女子が好き[作] 門地かおり(新書館)拡大僕の彼女は女子が好き[作] 門地かおり(新書館)〈『僕の彼女は女子が好き』を検索〉

イラスト:(c) 門地かおり/新書館拡大(c) 門地かおり/新書館

イラスト:(c) 門地かおり/新書館拡大(c) 門地かおり/新書館

 最初にご忠告申し上げます。この本、タイトルのとおり「百合本」、いわゆるレズビアンものです。しかも、超下品です! 今までの漫画偏愛主義史上、最高に、と言っていいのか、最低に、なのか分かりませんが、とにかく下品です。下ネタギャグ連発です。基本的に下ネタ嫌いな私ですが、私が今まで積み重ねてきた門地への愛で、克服しました。そう、門地は本来はBL作家です。愛がある方、もしくは下ネタOKな方、どうぞ!

 主人公の小世子は、大学生になって自分がレズビアンと気づき、チームメートの和美への思いを自覚する。ところが、小世子のチームにコーチとして来たモテ男・山切が、小世子にほれてしまう。そこからがてんやわんやで、山切からのアプローチに小世子は「今までの男の中ではマシかもしれない まだオス度が低いというか」と思い悩んだ揚げ句、「あんた・・・チン●切り落としてよ」「あと豊胸しろ〜〜っ」と叫んでしまう。驚愕(きょうがく)する山切だが「な〜んだ、相手にされなかったのはレズビアンだったからか」と前向きにとらえ、一気に小世子との距離をつめていく。山切の純情な妹・頼子や、女装男子・近本ら、個性的なキャラが次々登場し、ハイテンションな下ネタギャグが繰り広げられる。

 欲望と純情のハザマで揺れ動く小世子の空回りぶりや、小世子に振り回される山切をはじめ、とにかく、登場人物たちの極端な迷走ぶりは、世の常識の枠を突き抜けている。「突き抜けたギャグ」としか言いようがない。4〜6ページの1話読みきりの形式で連載されたものだが、徹底してハイテンション。掲載誌は「ぱふ」(雑草社)、「ウンポコ」(新書館)なのだが、いろんな作品が載っている雑誌に、いきなりこのテンションの作品が数ページだけあったら、なんか読者としてはついていくのが大変だったろうなあ、と思う。いや、いいんだけれどね。

 「ちょっぴりキワどい」と帯にあるが、「ちょっぴり」か・・・? とにもかくにも、ジェンダーがどうとか、性嗜好(しこう)がどうとか、難しいことを一気に頭から霧散させる迫力が、この作品には、というか門地作品にはある。どうぞ読んでみてほしい。ただし、下ネタに寛大な人にだけ。

 蛇足ながら、私の門地愛を語るエピソードを書き添えたい。もう十数年前だろうか。私が同人誌即売会に行った折、当時すでにかなりの人気のBL作家だった門地が「スケッチブックを受け付けてます」と小さな看板を立てて参加していた(当時は、スケッチブックを預けると、サインとともに無料で絵を描いてくれる作家さんがたくさんいたのである。略して「スケブ」と言っていた。今はどうなのだろう・・・)。私はいそいそとスケッチブックを差し出した。そのとき書いてくれた「ジャジャ馬ならし」(リブレ出版)の主人公・馬場君の絵は、今でも私の本棚に大事にしまってある。

プロフィール

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松尾 慈子(まつお・しげこ)

1992年朝日新聞入社。金沢、奈良支局、整理部、学芸部などを経て、現在、大阪編集局記者。漫画好き歴は四半世紀超。一番の好物は「80年代風の少女漫画」、漫画にかける金は年100万円に達しそうな勢いの漫画オタク。

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