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2012年10月19日
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漫画偏愛主義

ラブホの息子とAV監督の恋物語 キャッスルマンゴー(原作:木原音瀬 漫画:小椋ムク)

文:松尾慈子

写真:キャッスルマンゴー[原作]木原音瀬[漫画]小椋ムク(東京漫画社)拡大キャッスルマンゴー[原作]木原音瀬[漫画]小椋ムク(東京漫画社)〈『キャッスルマンゴー』を検索〉

写真:(c) 木原音瀬/小椋ムク/東京漫画社拡大(c) 木原音瀬/小椋ムク/東京漫画社

写真:(c) 木原音瀬/小椋ムク/東京漫画社拡大(c) 木原音瀬/小椋ムク/東京漫画社

 完結編となる2巻は発売延期となり、ついには「発売日未定」となってしまっていた本作。毎日本屋に通い詰め、ついに見かけた時には「おお!」と叫んで手にとってレジに走りましたとも。同時発売で、同じ主人公2人が登場するノベルズ「リバーズエンド」(木原音瀬・蒼竜社)も一緒にね。今回はBLコミックとBL小説、一緒にご紹介いたします。

 とりあえず、完結まで3年半、よくぞがんばってくださった。最初に雑誌の付録でプロローグ編となる小説「リバーズエンド」が出て、続いて木原の原作で小椋のコミックが連載され、コミックの単行本に小説が一緒に収録されるものと私は思っていたら、違った。ノベルズ「リバーズエンド」には、プロローグ編の小説と漫画、その数年後に主役2人がくっついてからのすれ違いを描いた書き下ろし小説「god bless you」が収録されている。漫画「キャッスルマンゴー」は、主役2人がくっつくまでのお話。どちらかというと、主人公の重い重い過去が明かされるノベルズの方が読み応えがあり、かつ不幸を書かせたら右に出る者のない木原の本領発揮であると思うのだが、BL漫画さえ普通の男性には敷居が高いと思われるのに、BL小説なんてさらにハードルが高いであろうことを考え、コミックの方を主にご紹介しよう。

 高校生・万(よろず)の自宅はラブホテル。そこへAV監督の十亀(とがめ)が撮影にやってくる。万は、十亀が同性愛者と知って、自分の弟と親しくする十亀を警戒する。誤解もあって十亀と万はつきあうようになるのだが、高校を中退しホームレス生活などで苦労してきた十亀は、真っ直ぐな気性の万を不幸にするようで、恋愛に踏み込めない。万が必死に告白しても「10年経っても同じこと言ってたら そん時に考えてやるよ」と追い返す。

 AV監督ながら、モラリストの十亀の過去が、小説「リバーズエンド」で明かされている。その不幸ぶりといったら身もだえするほどなので、漫画「キャッスルマンゴー」のラストで、万の深い深い愛を得るところで、ようやく読者としてもホッとさせられる。

 十亀の職業的成功や、万の素直すぎる性格にやや強引さを感じるものの、漫画は「切なさ」が持ち味の木原の原作と、小椋の繊細な絵柄が生きて、胸がきゅんきゅんしてしまう。漫画の視点は高校生の万なので、万の母が入院して生活に困る場面や、十亀に「未成年だから」と突っぱねられる場面で、「あ〜そうそう、高校生って不自由なんだよねえ」と思わされる。「泣かせる」とは少し違う、切ない木原節を堪能してほしい。

 ともあれ、木原さんが無事でよかった。最近、時期によってオーバーペースで仕事している風でもあり、一方で発売延期も多々ありで、熱烈ファンの私としては非常に心配していた。ファンは寡作にも発売延期にも耐えられるので、長く作品を生み出し続けて欲しい。

プロフィール

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松尾 慈子(まつお・しげこ)

1992年朝日新聞入社。金沢、奈良支局、整理部、学芸部などを経て、現在、大阪編集局記者。漫画好き歴は四半世紀超。一番の好物は「80年代風の少女漫画」、漫画にかける金は年100万円に達しそうな勢いの漫画オタク。

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