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Saigenji(2) あまりの脱力ぶりに衝撃

2009年7月22日

 世界が広いか狭いか論じられるほど、色んな場所に行ったことがあるわけではないが、どこにも必ず愛すべき人間たちがおり、包み込む環境がある、と思う。気が合う奴(やつ)はとことん合うし、合わない奴はやっぱり合わない。それは東京に限った話ではない。

 ブラジル人のカシンという男に会ったのは沖縄は那覇市にある居酒屋でのことである。かねてプロデューサーとしての斬新な仕事に心酔していた僕は大いに驚き、拙(つたな)い英語で話しかけてみた。すると奥さんが日本の方であること、当時出ていた僕の2枚のアルバムを聞いてくれていたこと、そして2枚目が特に好きだと語ってくれた。そこで恐る恐る「アルバムを作らないか」と聞いてみたら、「もちろん!」と答えてくれた。

 「1月の川」を意味するリオデジャネイロは、日がな一日潮風の匂(にお)いのする海沿いの街だ。2005年4月、南半球のかの地は秋。だがむせかえるような暑さは完全に夏のそれだ。

 翌朝カシンとの再会を果たし、街の生ジュースバーで一休みしたあと、早速スタジオに連れて行ってもらった。待っていたのはドラマーのドメニコ、エンジニアのダニエルたち。いきなり憧(あこが)れの面々の何とも柔和な笑顔での歓迎に、僕は完全に舞い上がってしまった。早速作ってきた曲を弾き語りで聞かせると、「OK! スタジオに入ろう」。早い! 瞬く間にベーシックを録(と)ってゆく。鮮度に満ちた独創性にあっけにとられる。

 2週間録音に明け暮れ、食事にはたっぷりと時間をかけ、たまに地元の酒でこっぴどい二日酔いにやられながら、録音は着々と進んでいった。その間、みんなの下らないジョークに腹がよじれるくらい笑いながら、僕もポルトガル語(主にスラング)を少しずつ覚えていった。

 カシンたちと会って痛感したのは、とにかくみんな本当に寛(くつろ)いでいて、自然体であること。あまりの脱力ぶりが何よりの衝撃だった。こんなにリラックスした付き合い方があるとは。帰国後、元に戻るのに異様に苦労したことは言うまでもない。

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