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写真家・三吉ツカサ(3) 正しい一枚を追いかけて

2009年12月9日

写真ダイブする観客。僕の上に落ちてくる人もいて、月に1本はレンズが犠牲に=AIR JAM98で

 メキシコから帰国した98年。前年撮影できなくて悔しい思いをしたパンクフェス「AIR JAM」が再び開催され、僕は張り切って写真を撮った。その後に出演バンドのひとつであるBRAHMAN(ブラフマン)に写真を見せにいった。彼らのライブは僕にとって特別なものに映り、ツアーに同行してみたいと申し出た。毎日同じバンドの写真を撮ってみたかった。かっこいい写真集はツアーを追ったものが多かったから、っていうのもある。

 彼らは僕の同行を快く許可してくれた。僕は宿代を浮かせるため、ツアークルーの部屋の床で寝ることになった。起きて、ライブを撮って、また床で寝て、ワゴン車で移動する。その繰り返しがとても刺激的だったし、同じ相手を毎日撮ることの難しさを学ぶことができた。それは今でも僕の力になっている。もちろん、もう床では寝ないけど。

 バンドのツアーは基本的に同じセットリスト。だけど演奏される楽曲は、その時のアーティストの気持ちや、集まったオーディエンスの雰囲気によって大きく表情を変えてくる。その“表情”を正しいタイミングで正しい場所からパシャッと撮れたなら、その日の“ライブ”が感じられる写真が撮れる。そう僕は思っている。

 といっても、その瞬間をじっと待っているわけじゃない。実際にはババババッと連写で撮っている。でも、その中に正しい一枚があればいい。今のデジタルカメラは液晶画面がついているのでプレビューを見れば安心はできる。でも、撮影中にそれを見る暇は僕にはないし、見たところでもう、その絶頂は戻ってこない。ライブは常に現在進行形。そこにくっついて進むことに意味があると思っている。

 そういう自分のスタンスの原点となったBRAHMANとは、もう10年を超える付き合い。撮りためた写真は30万枚以上。04年に出した写真集「IMMANENT(イマネント)」では約100点を選んでいるけど、それを選ぶのにかけた月日は、実は1年以上に及んでいる。

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