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写真家・三吉ツカサ(4) 柵前が僕の特等席

2009年12月23日

写真フェスの会場でカメラマン仲間と(左端が筆者)

 小さなライブハウスからキャリアをスタートさせた僕だけど、ここ数年は大きなイベントの撮影をよくやっている。野外で行われるフジ・ロック・フェスティバルやap bank fes、代々木体育館や日本武道館での撮影も得意になったと思う。でも武道館は別格。あの会場では緊張感が3割増しになる。僕はもちろんアーティストも。誰だって本番前は緊張するだろうけど、武道館のそれははっきりと違う。ステージからの眺めは満員の客席が覆いかぶさってくるようだと教えてくれた人がいる。だから、シリアスな写真が撮りたいなら武道館公演の本番直前に撮ればいい。その瞬間が撮れるかどうかは別だけど。

 初めて武道館で撮ったのは椎名林檎(りんご)さん。もともと男だらけの現場で撮影していたから、女性アーティストを納得いくように撮るのは難しかった。陰影の付け方や肌の質感の出し方など、それまでと違う技術が必要だったけど、それらをシャッターに収めながらものすごく嬉(うれ)しかったことを覚えている。椎名林檎さんはそれ以来ずっと僕にライブ写真を任せてくれるので、なんだか誇らしい。写真を始めた頃の自分に将来椎名林檎を撮るんだぞと教えてあげたい気分。

 昨日はこのコラムの第1回に書いたMaster―Lowのライブ。偶然にも彼の誕生日でした。客としてライブを見に行ったけど、2階席では自分が見たい角度が得られないし動けない。嫌になってタクシーで一度家に戻り、カメラを持って会場へ。僕はやっぱり見るよりも撮る方が好きなんだなあと思う。

 撮影する時はステージと客席の間、柵前(さくまえ)と呼ばれる場所に張り付いている。狭いし人は落ちてくるし、危険は多いけど、あそこが僕の特等席です。昨日もその特等席で写真を撮ってから打ち上げに行き、おいしいお酒を飲みました。「十何年前とやってること変わらないねえ」なんてイチさんと話しながら。写真と音楽が好きなので、これからも柵前に居ようと思います。

     ◇

 1月15日からはCDショップ大賞実行委員長の行達也さんです。

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