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演目紹介
第10回(08年7月4日)の演目

2008年7月11日

  • 文 京須偕充

 7月4日(金)19時から浜離宮朝日ホールで第10回朝日いつかは名人会が開催されました。二ツ目は桂花丸(桂歌丸門下)と古今亭駒次(古今亭志ん駒門下)、ナビゲーターは林家たい平、前座は柳家小ぞう(さん喬門下)。

 小ぞうさんの演目は「金明竹」、駒次さんが自作「戦国鉄道絵巻」、花丸さんが「お菊の皿」、たい平さんが「お見立て」。

 「戦国鉄道絵巻」は首都圏の私鉄各線、たとえば東横線、西武新宿線などなどを擬人化して、つまりそういう名称――名前の武将仕立てて戦場で活躍させ、戦況が刻々変化するストーリー。敵は新幹線。相互乗り入れなどのさまざまな運行状況を武将たちの作戦行動に転化してパワフルに演じました。鉄道事情は誰でも体験していることですから、新鮮で実感のある爆笑が相次ぎました。

 花丸さんはどちらかというと新作主体の日常ですが、この日は古典で季節ものの「お菊の皿」でした。皿屋敷にいまだにお菊さんの幽霊が現れて一枚、二枚……と恨めしそうに皿を数えている、というので怖いもの見たさで見に行ったら、お菊さんが美しいので病みつきになり、だんだん人気が出てお菊フィーバーが起こり、すっかり興行化してショーアップされたあげくに――という噺。

 古典とはいっても昔からトレンドをきわどく挿入して聴かせる噺です。花丸さんの現代的なセンスが生きて軽快な笑いを生みましたが、テレビ・オンエア向きの”真に迫る”幽霊演技に思わず顔を伏せてしまった女性客もあったようです。

 とっておきトークは二人が落語の道へ入った動機などを中心に楽しく話が弾みました。たい平さんが”落語家になってからはむしろ「笑点」を見ないようにしていた”と回想していたのがとても印象的でした。若い二人にとって、売り出すチャンスをつかむことと日頃の心構えとは別のものだというこの話は将来への大きな示唆になったことでしょう。

 たい平さんの「お見たて」はいわば十八番ものですが、この日はとくに充実していました。二、三年前にくらべてはるかに「たい平ナイズ」が進んで成熟し、独自の表現が至るところに見られました。現在、この噺ではトップランクではないでしょうか。

 第11回の朝日いつかは名人会は10月4日(金)19時から。二ツ目は鈴々舎わか馬、金原亭馬治、ナビゲーターは柳家喬太郎です。

プロフィール

京須 偕充(きょうす・ともみつ)

落語プロデューサー

1942年、東京生まれ。ソニー・ミュージック(旧CBS・ソニー)のプロデューサーとして、六代目三遊亭圓生の『圓生百席』や古今亭志ん朝の作品など、数多くの落語レコード、CDの制作を手がけてきた。

有楽町で開かれている『朝日名人会』に加え、06年4月に浜離宮朝日ホールを舞台に始まる『朝日いつかは名人会』をプロデュースする。

『落語博物誌』(弘文出版)、『落語名人会 夢の勢揃い』(文春新書)、『古典落語CDの名盤』(光文社新書)など、落語に関する著作も多い。

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