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インタビュー:米アカデミー賞候補「おくりびと」=滝田洋二郎監督

2009年2月2日

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 1月30日、監督作「おくりびと」が米アカデミー賞にノミネートされている滝田監督は、同作品の制作を思い立った経緯について「みんながあまりのぞかない世界をのぞいてみたいと思って」と語った。@2008 Departures Film Partners提供(2009年 ロイター)

 [東京 30日 ロイター] 滝田洋二郎監督作「おくりびと(英題:Departures)」が第81回米アカデミー賞の外国語映画部門にノミネートされ、同作品の舞台となった日本の葬儀屋の隠された世界が一躍脚光を浴びることとなった。失業中のチェロ奏者が、偶然出会った納棺師の仕事に最初は嫌悪感を感じつつも、次第に天職と感じるに至るまでを描いた同作品は、国内で興行収入30億円のヒットとなり、今後29カ国での公開が計画されている。

 ロイターとのインタビューに応じた滝田監督は、同作品の制作を思い立った経緯について「そんな職業はあるとは知っていましたが、いったいどういうことをどこまでやるのか、あるいはどういう風に生きてきた人がなさるのか。みんながあまりのぞかない世界をのぞいてみたいと思って」と語った。

 俳優の本木雅弘が演じる主人公の小林大悟は、チェロ演奏をしていたオーケストラが解散し失業することになった。彼は所有する高額のチェロを売り、妻の美香と新生活を始めようと故郷に引っ越す。そこで就職先を探していたところ、「旅のお手伝い」という謎めいた求人広告がきっかけで、妻に仕事の内容を隠さなければならないと感じる葬儀屋の見習いとして働くことになった。

多くの国で類をみない日本の「納棺師」は、家族を失った遺族の立ち会いの下、弔意と敬意が交錯する儀式において魔術師のような巧みな手先で遺体を清め、美しくするために奉仕をしなければならない。

 滝田監督自身も、遺族の反応に対する理解を深めるためにこのような儀式に何度となく出席したという。その時の状況について同監督は「亡くなった方の体を清めてお化粧して、衣装を変えて。で、その亡くなられた方のご遺体がかつて輝いていたころを彷彿(ほうふつ)とさせるような動きがあるわけですね。そのときの感情の多様性。笑う人もいれば、この人と出会って良かった良かった(など、さまざまだ)」という。

 一方、主演の本木は映画作りのためにチェロ演奏を学び、制作スタッフや共演の俳優を遺体に見立てて、数カ月にわたり葬儀屋の儀式を繰り返し練習したという。滝田監督は「美しく、心を込めて、彼のオリジナルとしての納棺師としてのスタイルを模索した結果、最初から最後までできるようになった。ジョークですが、彼は俳優として仕事がなくなったらこれで食べられるかもしれないと言っていた」としている。

 また、遺体の配役は困難を極めた。「難しいですね。これはやっぱり。人間は生きているから必ず動くんですね、いろんなところが。で、人によってほとんど動かない人もいらっしゃるんですよ。それは演技かというかよく分かりません」という。

 今回のような難解なテーマの作品がオスカー候補として認められたことに驚くが、滝田監督は、同作品は誰にでもとっつきやすい特性を持っていると指摘。さらに「主人公がいろいろな挫折や苦悩あるいは生きる喜びといったその...人間の普遍的で根本的な感情がありますね、どの時代でも」と述べた。

 ことしのアカデミー賞は、2月22日にハリウッドで発表される。

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