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国会包囲の暑い日、陽水が教えてくれた/フジロック総括

:10年ぶりとなったフジの舞台で圧巻のステージを披露した井上陽水=品田裕美撮影拡大10年ぶりとなったフジの舞台で圧巻のステージを披露した井上陽水=品田裕美撮影

:ストーン・ローゼズのイアン・ブラウン。伝説のバンドの復活に初日のグリーンステージはわきあがった=品田裕美撮影拡大ストーン・ローゼズのイアン・ブラウン。伝説のバンドの復活に初日のグリーンステージはわきあがった=品田裕美撮影

:オアシスのナンバーを解禁したリアム・ギャラガー。苗場に「ロックンロールスター」が流れると歓声が上がった=品田裕美撮影拡大オアシスのナンバーを解禁したリアム・ギャラガー。苗場に「ロックンロールスター」が流れると歓声が上がった=品田裕美撮影

 3日間の会期中、雨はほとんどなし。これはフジロック史上初になるのか? 2012年、夏フェスの最高峰は、天気も味方して大成功に終わった。

 1日目グリーンステージのトリ、ストーン・ローゼズ。主要メンバーがそろってまさかの再結成。1曲目、ミディアムテンポの懐かしいベースラインが流れてきて、涙しました。不仲で空中分解したイアン・ブラウン(ボーカル)とジョン・スクワイア(ギター)の息もぴったり。メロディアスなロックだが、ギターソロは思い切りサイケデリック、かと思えばギターのカッティングやベース、ドラムズで小気味いい16ビートを紡ぎ出す。伝説を目の当たりにしてポカーンとしている若いファンもいるにはいたが、たった4人でこれほどカラフルな音を出していたのか、1980年代後半のバンドがこんなに新しいことをやっていたのか。そう、ため息が出た。

 大先輩に対するリスペクトもあったのだろう。ひとつ前に出てきたビーディー・アイのリアム・ギャラガーも気合い十分。これまで封印してきた前身バンド・オアシスの曲も歌ってくれた。2日目のトリだったノエル・ギャラガーも自身のバンドを引き連れ、やはりオアシスの名曲を。弟と兄でオアシス競演をしたわけで「どうせなら一緒にセッションしてくれ!」と思ったファンも多かったろう。最近は少し兄弟の不仲も修復気味だと聞く。10数年後くらいに、「まさかの再結成」があるならば、舞台にフジを選んでくれるんじゃないかと妄想した。

 3日目のレディオヘッドやエルビス・コステロら英国勢が壮観で、ブリティッシュ・ロック・ファンにはたまらなかったろう。それ以外では、米ニューオーリンズから参戦したギャラクティックがすごかった。ゲストボーカルにハードロックバンド、リビング・カラーのコリー・グローバーを迎え、思わず踊るファンキーなうねりを出していた。コリーって、こんなにソウルフルだったっけ? 黒い! 最初、スルーしようとしていた自分の目の節穴を反省した。

 それに何といっても井上陽水! 今年のグリーンステージでの名演の随一ではなかったか?

 「東へ西へ」で始まり「夢の中へ」「氷の世界」など名曲をロックなアレンジでゴリゴリと押し、若い聴衆の度肝を抜く。「次の曲は最新のリズムで……」。とぼけたMCぶっこいて始めたのが「リバーサイドホテル」。のんびりしたシンコペーションが、本当に最新のダンスナンバーみたいに蘇る。圧巻は最後に演った「傘がない」。

テレビでは我が国の将来の問題を/誰かが深刻な顔をしてしゃべってる/だけども問題は今日の雨/傘がない

 1972年、安保闘争から学生運動の火がまだ熱く残っていた時代に、陽水はこう歌っていた。奇しくもこの日のステージと同じ日、原発依存からの脱却を訴える市民が国会を取り巻く「7・29脱原発 国会大包囲」があった。

 真夏の山の深い緑。清らかな風。渓流の冷たい水に足を休ませたフジロッカーたち。「当たり前のことが、実は当たり前じゃなかったんだ」ということに、陽水の歌でみんな、改めて気づいたんじゃないか?

 このとき、ステージ後方の通路はぎっしり埋まり、人が通れなくなっていた。

 

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【筆者プロフィール】

近藤 康太郎(こんどう・こうたろう)

1963年、東京・渋谷生まれ。朝日新聞文化部記者。著書に『リアルロック』、『アメリカが知らないアメリカ』など。週刊誌AERAにコラム「ギリギリ限界! MUSIC」を連載中。趣味・銭湯、サザンソウル。フジロックはルーキー・ア・ゴーゴーがお気に入り。

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