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命の実感“行間”に アニメ「スカイ・クロラ」押井監督

2008年7月28日

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写真「制作中、ずっと飛行機のことを考えられて楽しかった」と押井守監督=高波淳撮影

 押井守監督の新作アニメーション映画「スカイ・クロラ」が8月2日から全国公開される。「ショーとしての戦争」にかり出される永遠の子供たち「キルドレ」の物語。平和ゆえに、どこか生きている実感をもてない日本の若者に向けた「アニメによる文芸映画」という。

 過剰なまでに映像とセリフがあふれていた「イノセンス」から4年。新作は一転、ゆるやかな時間のなかで、静かにドラマが進んでいく。

 近未来の世界、恒久平和が実現しながらも、大人たちが平和を実感したいがゆえに「ゲームとしての戦争」が繰り広げられていた。パイロットとして戦闘を担うのはキルドレ。思春期のまま成長を止めた子供たちだ。彼らは戦争以外では決して死なない。そんなキルドレのパイロット函南優一(かんなみ・ゆういち)が、謎めいた上司・草薙水素(くさなぎ・すいと)のいる基地に着任したところから、物語は始まる。

 「ビジュアル表現をつきつめたイノセンスの後、違うものをやりたいと思っていた時、原作に出会った。人間関係が希薄になっている現代日本と同じような世界に生きながら、どうしようもない人間の業を抱えているキルドレに興味を持った」

 函南と水素は初対面のはずなのに、なぜか急速にひかれあっていく。ある日、水素がいう。「殺してくれる? さもないと私たち、永遠にこのままだよ」

 思い描いたのはトリュフォーの「隣の女」やヴェンダースの「パリ、テキサス」といった、愛ゆえに破滅へと向かう人間を描いた作品群だった。

 「ただ、子供のようで大人のようなキルドレは役者には荷が重い。心象を描くのに、むしろアニメに分があると思った」

 パイロットの地上生活はカット数を抑え、キルドレの心理のひだを視線や表情のわずかな動きで表した。どこか、観客に小説の行間を読み解かせるように。一方、空中戦は観客が戦闘機に乗っているような気分を味わえるリアルな3次元映像で描かれる。

 「実写なら、おそらく空中戦は描かない。しかし、すべての“絵”を一から作り出すアニメの監督って実写以上に孤独なんです。モチベーション維持のためにも飛行機も描きたかった」

 くしくも共に日本のアニメ界を引っ張ってきた宮崎駿も新作「崖(がけ)の上のポニョ」で子供を主人公にした。

 「男って50歳過ぎると死生観が出てくる一方、生命力にあふれたものをありがたがる」。「イノセンス」や宮崎の「千と千尋の神隠し」、北野武「HANA―BI」は、そんな死生観が表れた「冥界映画」という。

 「いったんあっちの世界をのぞいて、どう戻ってくるかに人間の本性が出てくる。それが宮さんは5歳の子供で、私は草薙水素という“女”だったということでしょう」(野波健祐)

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