「有閑倶楽部」「デザイナー」などのマンガ家一条ゆかりさんがデビュー40周年を迎えた。今なお月刊誌に映画化が決まった「プライド」を連載するなど、第一線を走り続ける。「マンガ家人生を支えるのは欲望」と話す一条さんに聞いた。
「40年間、飽きなかったのはマンガを描くことだけ」と一条さん。18歳で雑誌デビューし「デザイナー」「砂の城」など内面をえぐる愛憎劇から、累計2500万部突破のアクションコメディー「有閑倶楽部」まで、次々とヒット作を放った。
掲載誌の読者投票を必ずチェックするなど、人気にはこだわる。「人気さえあれば自由に描けるから。編集者だろうと他人から押しつけられるのが嫌いなんです。もちろん私と読者の感覚がずれていないかを確かめるのも大切」
押しつけへの反発と、あるがままの自分を肯定する「欲望」が創作のエネルギーになってきた。根っこは、故郷・岡山での少女時代にある。6人きょうだいの末っ子で、実家は貧しかった。左利きや食べ物の好き嫌い、ちょっと変わった性格も、周りはひたすら「なおしなさい」。強制は心の傷となり、マンガを描き始めたのは心を癒やすためだった。
シリアスからコメディーまで幅広く手がけたのは「飽きっぽい」だけでなく、周りに芸達者ぶりを見せつけたかったから。「マンガを読むと成績が下がる」と言われるのが嫌でいつも5番以内をとった少女時代に通じる「負けん気」が多彩な作品を生んだ。
ただ、恋愛マンガの達人と呼ばれることには抵抗があるという。「私が描きたいのは成長。人をもっとも成長させるものが恋愛なんです」。オペラ歌手を目指す対照的な2人の女性を描く「プライド」では、恋愛も織り交ぜつつ「人としての尊厳」をテーマに据える。最近は「愛情の欠落が人をゆがめる」というメッセージも込めている。
心の傷に向き合い、自らに納得するに至った心境をつづった「正しい欲望のススメ」(集英社)をこの夏に出版した。「最後は自分の人生をほめちぎって終わりたい。そんな“正しい欲望”は人を優しくします」(小川雪)