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映画で企画、漫画を作る 「コミカライズ」が隆盛

2008年9月10日

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 小説、漫画、ドラマを原作にして映画を撮るのは当たり前の時代だが、最近は映画の企画が先にあり、後から漫画が生まれる例がある。業界で「コミカライズ」と呼ぶ、この手法。後から生まれたはずの漫画が、先に世に出る不思議な事態も起きている。はて?(高橋昌宏)

■連載先行、上映アピール

 小学館の漫画誌ビッグコミック・スペリオール8月8日号で「おくりびと」の連載が終わった。2月から全12話と短く、月末には単行本が出版された。

 この漫画は、同じ題名の映画が原作だ。映画は漫画より遅れて今月13日公開。主人公は、オーケストラが解散して山形に帰郷したチェロ奏者。偶然から、死者に死に化粧を施す納棺師になる。滝田洋二郎監督で、今月1日にカナダ・モントリオール映画祭の最高賞を獲得した。

 今年公開の映画で、コミカライズした漫画は、他に「僕の彼女はサイボーグ」(週刊ヤングマガジン=講談社)、「ICHI」(イブニング=同)、「フレフレ少女」(スーパージャンプ=集英社)など。昨年は「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」の連載を、しりあがり寿がスペリオールで担当した。

 こうしたメディアミックスの歴史は長い。角川書店が映画、文庫、音楽の連動で成功した70年代以降、漫画やドラマに広がった。近年は、出版社やテレビ局などが出資する「製作委員会」方式の映画作りが増えて、各社が得意の分野でPRする。漫画は連載の形で長く人の目にふれ、宣伝効果が高いという。

 「おくりびと」の間瀬泰宏プロデューサーは「監督の名前で観客が入る時代は終わり、今はタイトルをいかに認知してもらうかが課題」と語る。この映画は原作が無いオリジナル作品で、タイトルも造語なので、周知に時間がかかると考えてコミカライズを採用。映画は昨夏に完成したが、漫画を先行させた。

 製作委員会に参加した小学館は、漫画の掲載に加え、原作中の逸話をもとに黒田征太郎が描いた絵本「いしぶみ」を出版。「書店で漫画と絵本が平積みになれば、映画の存在を知ってもらえる」(間瀬さん)。漫画連載→絵本・単行本→映画公開という順序は、計算の結果なのだ。

 この戦略は漫画誌にとどまらない。情報誌「TOKYO★1週間」は映画やドラマのコミカライズに力を入れていて、ディズニーと交渉して「パイレーツ・オブ・カリビアン」を連載した実績もある。

 コミカライズの次は何だろう。例えば、今年冬に公開予定の映画「赤い糸」。上映前にフジテレビ系で、同じ出演者で連続ドラマを放送し、上映中も放送が続く。物語を両作品で絡み合わせ、ドラマを見ると映画も見たくなる展開にする、という。

■漫画家の個性 見どころ

 漫画の世界はオリジナル作品が多い。映画を原作に漫画を描くことを、当の漫画家は、どう考えるのだろう。「おくりびと」の作者は、作家性の強い作品で知られる、さそうあきら。「生と死というテーマが普段描いている作品と同じ。脚本がすばらしかった」と動機を語る。

 漫画を描く前に、原作の映画は見た。そこで「逆に、映画の通りに描くのは失礼」と感じたそうで、人物の容姿や設定の一部を変更。また映画より一層、音楽が物語の展開にかかわる。

 自作の映画化という、今回と逆のケースも、さそうは多い。「その場合は、作品をどう料理してくれるのかが楽しみ。今回は、僕の頭の中で枝葉を継ぎ足すのが楽しかった」と言う。

 「ICHI」を連載中のイブニング誌の梶原和哉編集長は、女座頭市の設定を面白がった。漫画は篠原花那。歴史に詳しく、アクションや女性剣士の心理描写ができるとみて、コミカライズの打診をした。

 篠原は、編集部から「市のキャラクター以外は縛られなくていい」と聞いて引き受けた。映画は明示していない時代設定を、自分の好きな幕末の混乱期にし、新しいエピソードを加えた。梶原編集長は「約2時間の映画に比べて、漫画の連載は情報量が多い。漫画家の作家性を生かすためにも、ストーリーは自由に膨らませるほうがいい」と話している。

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