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中国の若者に日本語熱 アニメ人気が後押し

2008年12月10日

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 「日中青少年友好交流年」の閉幕式のイベントとして、先月、東京都内で両国の若者が互いの国の歌を歌う「日中青少年歌合戦」が開催された、堀英治撮影。中国側の歌から見えてきたのは、彼らの間での日本アニメのパワーのすさまじさだ。

 中国側のトップバッターとして舞台に立ったのは北京外国語大学を卒業したばかりのリュウ・ジンルオさん(22)。幼稚園の時に初めて「聖闘士星矢(セイントセイヤ)」を見た。中学生で「新世紀エヴァンゲリオン(新世紀福音戦士)」と出会い、アニメ声優が将来の夢に。歌ったのは桃井はるこ(声優・歌手)の「WONDER MOMO―i」。名刺に日本語で「日本アニメ声優を目指してます」と刷り込むほどで、来春、日本の声優学校に留学する。

 北京大学で日本語を学ぶ武曽宇(ウー・ツォンユー)さん(20)は高校1年の時に「SLAM DUNK(灌籃高手)」のテーマソングを聴き、アニメやJポップに興味を持った。「日本語を学ぶことに両親は複雑なようでしたが、僕の選択を尊重してくれた」という。コブクロの「桜」で3位に入賞した。

 サッカー・アジアカップのブーイング騒動(04年)など、中国の若者の反日行動は記憶に新しい。だがその中国で、空前の日本語ブームが起きている。国際交流基金の調べでは、中国で日本語を学ぶ人は約68万人(06年)。98年から40万人以上増えた。

 「日本語ブームはアニメの影響」と語るのは、早稲田大学非常勤講師の劉文兵(リュウ・ウェンピン)さん。中国で「鉄腕アトム(鉄臂阿童木)」がテレビ放映されたのは79年。以後、「一休さん(聡明的一休)」「ドラゴンボール(龍珠)」などが中国の子供たちを魅了した。「でも、最も影響を与えたのは盗版(ダオバン)(海賊版)なんです」

 街で売られる「盗版」のアニメVCDは、吹き替えではなく字幕スーパー。つまり、音声は日本語のままだ。中国人留学生事情に詳しい筑波大学名誉教授の遠藤誉さんは「字幕を追うと画面を見られず、感情移入できない。そこで日本語を覚え始めた若者が多い」と語る。「今ではインターネットでアニメやドラマを見る人が増えています」

 絢香×コブクロの「あなたと」で1位に輝いた中国伝媒大学の張一凡(チャン・イーファン)さん(19)もそんな若者の一人。張さんが見るのは無料動画サイト。いわば中国版ユーチューブだ。今はドラマの「ブラッディ・マンデイ」に夢中だという。

 幼少時のアニメ体験から生まれた日本語ブーム。だが、学生から「今は中国のテレビで日本アニメが見られない」との不満の声を聞いた。テレビや映画を管轄する国家広播電影電視総局が、06年9月以降、ゴールデンタイムの外国アニメ放映を禁止した。「国産アニメの放送規模拡大」が表向きの理由だが、事実上、日本アニメの締め出しだ。

 「青少年の精神形成に与える影響力に政府が気付いたんです。日本アニメに流れる“自由な発想”と“自分の選択”には、民主主義の基礎がある。それをストップさせたいわけです」(遠藤名誉教授)。日中の若者に共通の話題を提供する日本アニメが「友好交流年」を前に締め出されたとは皮肉な話だ。長い目で見ると、中国で日本語を学ぶ若者の数も減っていくかもしれない。(竹端直樹)

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