将軍は女性、仕えるは大奥の美男3千人!? 男女の役割が逆転した江戸時代を描くよしながふみさんのマンガ『大奥』(白泉社「メロディ」)が話題だ。早くも1巻で06年度の文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞。社会と性とのかかわりを根本から問う物語の深さが、読み手を引きつける。
男性だけがかかる疫病の大流行で3代将軍家光が死去。娘の千恵が将軍「家光」の名を継ぐ。それは「仮の措置」だったが、男性は減り続け、次第に働き手も後継ぎも女性が担う社会に。千恵以降、将軍には「男名(おとこな)」を持つ女性が即位、大奥には子孫を残すため男性が集められ、大切に扱われるようになった。
「大奥のお鈴廊下に裃(かみしも)姿の男性がずらっと並んだらおもしろいと思ったのが出発点」。華やかな印象の大奥だが、結局は世継ぎをつくるためだけの存在だ。「男女を逆転させたら悲しみやグロテスクさがより浮き彫りになった」
「のちのち不合理な制度も、最初はそれなりの理由がある」「女性が主流になっても負担はむしろ増す」など、描かれる社会像や課題はきわめて現代的でもある。
24日発売の4巻では、家光・千恵から5代綱吉・徳子の世が描かれる。
一方、「モーニング」(講談社)で連載中の『きのう何食べた?』も好評だ。男性カップルをめぐる味わい深いドラマ。先月2巻が出た。描かれる料理は、よしながさんがつくり慣れているもので、レシピ本にもなっている。
両作品とも主人公は社会的に抑圧された存在。「ものを描く人間は、多数派に入れない孤独感がないと創作できない。それがマイノリティーへと興味を向かわせてもいる」
94年にデビューし、主に男性どうしの恋愛を描くボーイズラブで人気を博してきた。「ざっくり言うと」と前置きし、「今の男女のあり方に居心地の悪い人がボーイズラブにひかれるのでは」とみる。
「『大奥』ほどゆがんだ世界で初めて男女の恋愛が描けた。家族であれ男女であれ、人間の関係性を丁寧に描いていきたい」(小川雪)