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「静かなるドン」連載1000回 極道通じ描いた庶民賛歌

2009年3月10日

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 昼は下着会社に勤めるサラリーマン、夜はヤクザの総長。そんな主人公が活躍する週刊漫画サンデー(実業之日本社)の「静かなるドン」が先月、連載千回を迎えた。作者の新田たつおさんは30代半ばから20年もの間、ほぼ「ドン」一筋で歩んできた。「どこまでも低俗かつ俗悪な世界を描き、最後に人間そのものを許す。そんな作品を目指した」と語る。

    ◇

 連載は88年スタート。単行本は現在90巻で、4200万部になる。主人公は「新鮮組」3代目の近藤静也。極道の血を封印するため自ら足を踏み入れたサラリーマンの世界で、ささやかながらたくましい庶民の暮らしに人生の神髄を見いだす。そんなシンプルなストーリーに、ギャグや純愛や戦闘を縦横無尽に絡めて幅広いファン層を獲得、テレビドラマにもなった。

 ヤクザたちが滑稽(こっけい)かつ人間味たっぷりに描かれているのが特徴だ。殺されたり落とし前をつけたり、といった「仁義」の表現も少ない。「イメージはテキ屋の寅さん。生きていることそのものが幸せなら、極道だって幸せに生きていいでしょう」

 静也の上司、川西の存在も要になった。社長にこび、静也をネチネチいじめるが、部下思いの一面も。静也が「どこの組織でも上の者の言うことは絶対」と川西をかばう姿に、留飲を下げた管理職は少なくないだろう。静也の子分らもみな、どこか憎めない。心弱き存在への温かなまなざしが光る。

 しかし「ひとつの作品に20年向き合い続けることは、新しい作品を量産すること以上にいばらの道だった」という。ある瞬間に時代のツボに入っても、次の瞬間には時代はすでに動いていて、簡単に飽きられるからだ。

 「ドン」人気はある種の「ないものねだり」に支えられている、とも。「日本人は派閥志向が強く、本能的に英雄を求めない。理想のトップなど出てくるはずがない」

 平穏な暮らしに光を見いだした静也は今、ヤクザ組織の解体に全力を尽くしている。結末はすでに頭の中にある。そして、ヤクザものはもう二度と描かないと決めている。

 「今はヤクザより一般社会の方が、どこかマンガに近づいてきた気がしますから」(吉田純子)

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