2009年9月17日
中沢啓治さん
自らの被爆体験をもとにしたマンガ「はだしのゲン」の作者中沢啓治さん(70)が、構想中だった「ゲン」の続編の執筆を断念したことが明らかになった。掲載誌も決まり2回分の下書きまでできていたが、白内障などで視力が衰えたため、決断した。
中沢さんは6歳のとき広島で被爆し、父と姉、弟を失った。中学卒業後、看板店勤務を経て上京、マンガ家となり73年に「はだしのゲン」の連載を始めた。原爆の悲劇と、家族の死を乗り越えてたくましく生きる少年の姿を迫力ある筆致で描いた作品は大きな反響を呼び、単行本は累計1千万部を超え、十数カ国で翻訳されている。
続編は、上京したゲンがマンガ家の手伝いをしながら画家を目指し、フランスへ旅立つまでを描く予定だった。連載2回分、約32ページの下書きまで進んでいた。
中沢さんは「目が悪くなり細かいコマが描けないので、マンガはもうやめた方がいいと決めた。今後は油絵や講演などで反核のメッセージを訴え続けたい」と話している。(小原篤)