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2012年10月5日10時00分
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映画『007』50年の歴史をたどる

【PR】 映画『007』50年の歴史をたどる

007シリーズ生誕50周年の記念作となる「スカイフォール」

ダニエル・クレイグ演じるジェームズ・ボンド

見えない脅威に命がけで戦いを挑むボンドの運命は

 10月5日はボンドの日。第一作の『007は殺しの番号』から数えて50年。12月1日に公開される最新作『スカイフォール』と合わせて23作、およそ一年おきにジェームズ・ボンドの新作が発表されてきた勘定になる。これほど長期にわたって愛されたヒーローは、ちょっといないだろう。

 ボンドのどこがいいのか。いうまでもなく、カッコいい。ダンディでスマート、筋肉隆々でスポーツ万能。そのうえに博覧強記で、ファッションからスポーツカー、ワインの当たり年まで何でも知っている。出てくる女性は片端からボンドのとりこになってしまう。男性の願望を絵に描いたようなスーパーヒーローという次第だ。

 そのイメージを定着させたのが、最初の五作品に登場したショーン・コネリーである。スパイなのだから人目に立たないように動くはずなのに、ショーン・コネリー版のジェームズ・ボンドは隠れるどころかいつも堂々、名前を聞かれても「ボンド、ジェームズ・ボンド」というように、ちゃんと答えてしまう。考えてみればヘンだけど、それを当たり前に思わせるほどカッコいいのですね。敵に何度襲われても柳に風と受け流すクールな表情が粋でおしゃれで、男の子はこぞって真似をしたのだった。

 だから、ショーン・コネリー版のボンド映画はいまでも輝いている。第二作『007ロシアより愛をこめて(007危機一髪)』は傑作の名の高い作品だが、他にも『007 ゴールドフィンガー』、『007 サンダーボール作戦』、それに日本を舞台にした『007は二度死ぬ』と、何度見ても面白い。タイトルが出る前にカメラのシャッターの中みたいな映像が映り、そこに現れたボンドがこっちに銃を構えて一発、そこからアクションをギュっと詰めたような挿話が展開してタイトル・シーン。書くだけで場面が浮かぶほど記憶に焼き付いている。

 ただ、ここまでボンドが板につくと、俳優としてはジェームズ・ボンドのイメージが強すぎて、ほかの映画に出る機会がなくなってしまう。それはイヤだとショーン・コネリーが主演を渋ったため、二代目のボンドはジョージ・レイゼンビーに引き継がれた。この人もカッコいいし、出演した『女王陛下の007』はシリーズの中でも屈指の出来だと思うけれど、主演がショーン・コネリーではないというだけで観客がついてこなかった。一作で降ろされた後、『007ダイヤモンドは永遠に』でショーン・コネリーが復活したものの、もう出ないとまた出演を断ってしまう。その後のショーン・コネリーは、いわばシリーズ番外編の『ネバーセイ・ネバーアゲイン』でもう一度ボンドを演じたものの、ジェームズ・ボンドという枠を越えた名優として活躍したと見るべきだろう。

 ヒーローがあまり強すぎると、強すぎるのでギャグになってしまう。『007ダイヤモンドは永遠に』は欠点満点、でも魅力も満点という快作だけど、それはいやいや出演を引き受けたショーン・コネリーに全然やる気が見られず、いつも以上に淡々としたその芝居が荒唐無稽なお話と合わせて絶妙な効果を上げているからだ。で、そのスーパーヒーローの強さをさらに誇張したのが三代目ボンドのロジャー・ムーア。イギリスのテレビ・シリーズ『ザ・セイント』で人気を博した人で、ボンド映画にも七本主演しているが、ショーン・コネリー版よりもコメディ・タッチを強め、スペース・シャトルとか何とか、冗談みたいな大仕掛けの大作路線を突っ走ることになった。

 ロジャー・ムーアも粋でよかったけど、やはり俳優も年齢を加えると動きが鈍くなる。そこで一気に若返ったのが四代目のティモシー・ダルトン。『リビング・デイライツ』も『消されたライセンス』も、大仕掛けに頼らずにヒーローが身体を張るアクションがご機嫌という作品だった。五代目は『ゴールデンアイ』、『トゥモロー・ネバー・ダイ』、『ワールド・イズ・ノット・イナフ』、『ダイ・アナザー・デイ』に立て続けに主演した、ピアース・ブロスナン。格好良くて動きも冴えて、イアン・フレミングの原作に一番近いボンドはこの人ではないだろうか。ボンド映画、中興の祖だ。

 人気シリーズの抱える問題がマンネリ化。ピアース・ブロスナンは定石を踏まえた正統派のジェームズ・ボンドだったけれど、それだけに昔の作品と差別化が難しかった。そこで六代目のダニエル・クレイグから、ボンド映画が一新されることになる。まず、スーパーヒーローになる前の駆け出しスパイとしてボンドが出てくるところが新しい。大仕掛けに頼らずに俳優の肉体でアクションを進めるところはティモシー・ダルトンと似ているが、ユーモアをほとんど取り去ってアクションばっかり。これが見事に決まり、『カジノ・ロワイヤル』と『慰めの報酬』はショーン・コネリー全盛期に匹敵する作品に仕上がった。そのダニエル・クレイグの第三作が『スカイフォール』。さ、これを機会に、22作品を全部見て、12月1日の最新作公開に予習して備えよう。

Skyfall (c)2012 Danjaq, LLC, United Artists Corporation, Columbia Pictures Industries, Inc. All rights reserved.

プロフィール

藤原帰一(ふじわら きいち)

 1956年東京生まれ。東京大学教授として国際政治を教えるのは世を忍ぶ仮の姿。その実体は、1日見ないと仕事もできなくなる映画の虫、四年半にわたって『AERA』でコラム「映画の記憶」を担当した。著書に、『映画のなかのアメリカ』(朝日新聞社)、『これは映画だ!』(朝日新聞出版)など。

007 「スカイフォール」 ストーリー

007シリーズ生誕50周年の記念作となる「スカイフォール」は、「カジノ・ロワイヤル」で鮮烈に登場したダニエル・クレイグ主演の第三作だ。さらに「アメリカン・ビューティー」でオスカーを受賞したサム・メンデスが監督を務めるということで、ファンの期待は最高潮に達している。今回はなんと、ボンドが絶対的な忠誠を誓ってきたあの「M」の衝撃的な過去が明らかになるという展開。2人の信頼関係が揺らぐ中、彼らが所属するイギリス情報局秘密情報部「MI6」が何者かに狙われる……。見えない脅威に命がけで戦いを挑むボンドの運命は?
また、主題歌には、今年のグラミー賞で最多6冠を獲得した英国出身歌手アデルが2年ぶりに書き下ろした「スカイフォール」の起用が決まり、こちらも注目されている。

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