現在位置:
  1. asahi.com
  2. エンタメ
  3. 映画・音楽・芸能
  4. 映画
  5. 記事

継がれる「前衛のバトン」 カンヌ映画祭報告(下)

2008年5月28日

印刷

ソーシャルブックマーク このエントリをはてなブックマークに追加 このエントリをYahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

写真「監督週間」創設40年。祝福に、約40人の映画人が登壇した=フランス・カンヌ、宮崎写す

 今年のカンヌ映画祭は、学生や労働者が先導したフランスの反体制運動「5月革命」の余波で中止された68年から数えて40年。中止は負の遺産でなく、前進の糧になった、というのがカンヌ史である。

 「68年はカンヌに重要な影響を及ぼした。映画に作家性とリアリティーを取り戻し、フランスが製作国の利害を超え、世界の作品を幅広く選ぶようになった」。当時は映画評論家、今は映画祭を統括するジル・ジャコブ氏が、米誌「バラエティー」の映画祭特集号で、そう語っている。

 68年を機にカンヌは「監督週間」を新設した。作家性と鋭い感性を重視。コンペティションや「ある視点」といった、映画祭の他部門とは別の運営主体があり、ジャコブ氏や、今の総代表ティエリー・フレモー氏の力も及ばない。

 監督週間の現在の責任者はオリビエ・ペール氏。「映画祭も映画の方法論も68年を境に変わった。怒りや希望、反抗やユートピアを映像で語り始めたんだ。40周年を迎え、原点に立ち返りたい」

 そんな趣旨を踏まえ、オリビエ・ジャアン監督「40×15」が上映された。監督週間に出品歴のある監督たちが出演し、40年を振り返り、メッセージを語る。ケン・ローチ、テオ・アンゲロプロス、ミヒャエル・ハネケ……。ジム・ジャームッシュは「パンクロックのように、想像を超える映画体験が求められている」と述べ、ベルナー・ヘルツォークは「誰も知らない、誰も話題にしない映画を、自分だけが完全に知っているという映画ファンの喜びを取り戻したい」と、スクリーンから語りかけた。

 ところで、ペール氏が「68年の申し子」と呼ぶ監督の作品が、今年のコンペティションに参加した。アンディー・ウォーホルらと交流があり、前衛の作風から「ゴダールの再来」とも言われたフィリップ・ガレル。その作品「フロンティア・オブ・ドーン」(未踏のあけぼの)は全編モノクロで、女性の亡霊が鏡の中に現れる。初回のカンヌに「美女と野獣」で参加したジャン・コクトーにささげたのだ、と本人は語った。

 ガレルは今年60歳。「フロンティア〜」には、まだ20代だというガレル自身の息子が主演。その息子も、自分で監督した映画が監督週間に選ばれた。前衛のバトンは、こうして次世代に継承されていく。(宮崎陽介=カンヌ)

検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内