児童文学のミリオンセラー、梨木香歩さんの「西の魔女が死んだ」(新潮文庫)が長崎俊一監督の手で映画化された。作品世界が壊れないよう映像化を断ってきた梨木さんだが、今回は「スタッフの熱意と誠意を感じた。映画と原作は微妙に違うが、それぞれに味わっていただけたら」と話している。(吉村千彰)
学校に行けなくなった中学1年の少女まいが、西の魔女と呼ぶ英国人の祖母の家でひと月を過ごす話。魔女修業と称して料理や洗濯のほか「何でも自分で決める」という大切なことを教わる。
まいを演じるのは新人の高橋真悠。祖母役にシャーリー・マクレーンの実娘サチ・パーカーを起用。長崎監督が脚本も手がけ、原作の世界観を再現した。
梨木さんが感動したというのが山梨・清里のロケ地。山小屋風のおばあちゃんの家やワイルドストロベリー畑やハーブの庭。「家だけでも立派な作品」
映画では、まいのかたくなさが生む周囲との緊迫感が薄れた分、柔らかな調和が生まれた。象徴的なのが、原作にない郵便屋さん(高橋克実)の存在だ。
「おおらかで包容力のある郵便屋さんと、嫌悪されるゲンジさん(木村祐一)の2人がそろうことで、まいは、偏りのない男性性と出会えている。サチさんという女性の内面ではおばあちゃんの魂と少女の魂が対話しているよう。個々の役割を描く中で、一人の人間の全体像が調和のとれた形で表れている」
児童文学を読むと、自分が内包する子どもの魂が賦活する、と梨木さんは言い、祖母から母、娘へと命を育む知恵を伝える物語を書いてきた。
「加速度的に変わる社会も基本的には昔からの連続性の上にある。昔からのスキルが今までのように役立つかどうかわからないけれど、情報として持っているに越したことはないと思います。それは逆も同じ。まいとおばあちゃんは世代も性格も違うけれど、影響は与えあうものだから、受信体にも発信体にもなりうるはず」
21日から東京・恵比寿ガーデンシネマほか全国で公開。また清里の祖母の家が来年1月4日まで公開されている。小学生200円、中学生以上300円。事務局(0551・48・2071)。