戦前戦後を通じて、夫の川喜多長政とともに外国映画の配給に尽力した、川喜多かしこの生誕100年を記念した企画が25日から、東京・京橋の国立近代美術館フィルムセンター(FC)で始まる。配給以外にもアーカイブの充実や、邦画の海外普及に努めた「日本映画の母」の姿を、展示や上映で幅広く伝える。
かしこは長政が創業した東和商事(現・東宝東和)に29年入社、ほどなく2人は結婚し、30年代以降の欧州映画を次々輸入、配給していく。
展示「川喜多かしこ展」はトレードマークの紫の着物と黄色のトランクから始まる。中心は多くの映画人との華やかな交流を伝える写真や手紙だ。ロンドンでは撮影現場で黒澤明とジョン・フォードの間に収まり、東京においてはジェラール・フィリップ夫妻を歓待する……。さらに野口久光による日本公開版の作品ポスターや、世界のフィルムライブラリーを紹介した冊子などが並ぶ。
FC主任研究員の岡田秀則さんは「国際舞台での交流だけでなく、日本でいち早く映画の保存運動を提唱した地道な活動家としての一面も示した。彼女はフィルムセンターにとっても母にあたる存在」と話す。
一方、上映「川喜多かしことヨーロッパ映画の黄金時代」は「天井桟敷の人々」をはじめ、約60作品。初めて輸入にかかわったドイツ映画「制服の処女」(31年)をはじめ、「女だけの都」などの30年代フランス映画に「第三の男」といった戦後イギリス映画、ヌーベルバーグ作品やATG第1作「尼僧ヨアンナ」など、かしこの目利きが、そのまま映画史に連なっている様がわかる。
9月28日まで(企画展は一部展示品を入れ替え、10月7日から12月26日にも開催)。問い合わせは03・5777・8600(ハローダイヤル)へ。(野波健祐)