ダニー・レビ監督
ヒトラーに演説の指導をしたユダヤ人を描いた「わが教え子、ヒトラー」が9月6日から東京・渋谷のル・シネマで公開される。実話にヒントを得ながらも、フィクションや喜劇的要素を盛り込んだ。ユダヤ人のダニー・レビ監督は「ヒトラーは否定的な存在だが、今でも大きなモニュメント。笑いの対象にすることで、引きずり下ろす効果がある」と語る。
ドイツ帝国を舞台にした映画を構想していた時、一冊の本に出合った。32年、ナチ党の党首ヒトラーに随行し、発声やジェスチャーの方法を教えたドイツ人の実話。「コメディーに使えると思った。多くの人が話術の天才だと考えている彼に、実際は教師がいたというのは笑える」
脚本では、教師をユダヤ人の元俳優に、教えた時期を敗戦直前の44年に変えた。心身を病んだヒトラーが力強く演説できるほどの威勢を取り戻せるようにと命じられる設定のほか、エピソードの多くにフィクションと笑い話を織り交ぜた。
ジャージーを着たヒトラーが心理セラピーを受け、幼少期の心の傷を告白。側近よりも教師を信頼し、やがて2人は友情に似た感情を抱く……。大胆に想像力をふくらましたのには理由がある。
「映画で、歴史を複写できるという考えには懐疑的。特に戦争は」という。一方で、「コメディーは真実と説明しない分、従順性を求めず、観客の考えや抵抗を誘発する点で誠実」と分析する。
ユダヤ人はアイロニー好きだという。「ドイツ人は自分たちのことをなかなか笑えないが、それができるのは健康的なことだ」(高橋昌宏)