メキシコとアメリカの国境の街で、いまなお続く女性殺害事件を題材にしたサスペンス映画「ボーダータウン 報道されない殺人者」が18日から公開される。監督はグレゴリー・ナヴァ。事件の背景に広がる闇の構造を鋭く追及した問題作だ。
米シカゴの女性記者ローレン(ジェニファー・ロペス)は上司から、国境の街フアレスで起きた連続女性殺人の取材を命じられる。現地では、巨大工場地帯で働く若い女性が数年間に500人も殺されながら、未解決のまま放置されていた。ローレンは奇跡的に生き延びた被害者エバと出会い、真相究明に乗り出す。しかし、その前には大きな壁が立ちはだかっていた……。
国境にほど近い米サンディエゴ生まれのナヴァ監督が事件を知ったのは93年。調べていくうち、現地の警察や政治家が意図的に事件を隠蔽(いんぺい)していることを知る。
「背景に国家レベルの経済問題があり、簡単には解決できない。私にできることは、ドラマにして広く知らしめることぐらいしかなかった」
脚本のため、被害者遺族団体や、弾圧を受けながらも報道を続ける地元新聞社などに膨大な聞き取り調査をした。プロデューサーでもある妻は監督に内緒で3日間、工員として工場へ潜入取材もした。
ローレンは真実に近づくたび妨害にあう。ロケ現場でもバスに銃弾を撃ち込まれ、カメラを盗まれた。公開後、遺族におぞましい脅迫状がメールで送られてきたという。「恐ろしいことですが、妨害は真実を撮った証し。公開後に殺害は減ったらしいが、まだ遺体は出てきている」
映画はベルリン映画祭で上映され、監督は国際人権団体のアムネスティから功績をたたえられた。
「映画は事実に基づいているが、ドキュメンタリーではない。ひどい環境でも目標に向かう2人の女性の友情と成長のドラマなのです」(野波健祐)