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《東京国際映画祭:星取りレビュー》「アンナと過ごした4日間」(★★★☆☆)

2008年10月20日

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写真(C)Alfama Films/Skopia Films

■「サイコ」な男の心性の在りかは?

 監督作もあるが、脚本家として映画史に名を刻むイエジー・スコリモフスキの新作は、コンペ作品中、最大級の注目作だ。

 題名は一見、コミカルな恋のロードムービーを思わせるが、まるで正反対だ。

 独り暮らしの看護師アンナの日常を、隣家のレオンは双眼鏡でのぞき続ける。「観察」に飽きたらず、アンナが寝入りばなに口にする飲み物用の砂糖を睡眠薬に取り換えておいて、昏睡させる。レオンは毎夜、忍び込むが、暴行どころか、指1本触れない。寝入るアンナの横で、床をぞうきんがけし、アンナの上着のほつれたボタンを繕うだけ。

 レオンは過去に、アンナが何者かにレイプされるのを目撃したが、犯人を追うでもなく、アンナをいたわるでもなく、犯人に仕立てられる。が、ストーカーとしての所業が状況証拠とされて……。

 ストーカーの一つのタイプの心性を描いているのか。傷ついた女性を、ただ見守りたい、寄り添っていたい。誰にも邪魔されず、一方的な所有の感覚に酔いしれたいのか。レオンは老いた祖母と二人暮らしという設定で、ヒッチコックの「サイコ」さながら、「母性」にからめとられたトラウマがありそうだが、ついに明かされない。

 昨今、川端康成「眠れる美女」をドイツ人監督が映画化した。女衒の取り仕切る隠れ宿で、眠り続ける若い女に添い寝する男を描いた退廃的な作品だ。正気と狂気、正常と異常の境目を見定めたいという欲求は今、国際政治や宗教、猟奇的犯罪にいたるまで、現代の切実な問題として世界を覆っているのではないか。レオンの行為が愛の証か倒錯かと問いかける「アンナ〜」は、そうした欲求を比喩的に描いているように映った。

 スコリモフスキは、社会派の巨匠アンジェイ・ワイダ監督「夜の終りに」を手がけた。若者の無軌道ぶりを快活に描いた物語で、ワイダ監督の「らしくない」一面を引き出したといえる。ヨット上の男女3人の愛憎を映したロマン・ポランスキー監督「水の中のナイフ」も書いた。どちらも、ジャズに彩られたモダン調。だが、実はカルトホラーも手がけており、「アンナ」は、その延長上にあるのだろう。(アサヒ・コム編集部 宮崎陽介)

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