前田哲監督
クラスでブタを飼って、大きくなったらみんなで食べる――こんな授業で命の意味を学ぶ子どもたちを描いた「ブタがいた教室」が来月1日に公開される。大阪の小学校で実際にあった実践教育をもとに、「ドルフィンブルー」の前田哲監督が13年がかりで映画化した。ブタの命をめぐる子どもたちの熱い討論は、大人にも様々な問題を突き付ける。
春。6年2組に担任の先生が子ブタを連れてくる。26人の児童は大喜び。でも、可愛がるだけではブタは飼えない。小屋の掃除やフンの始末に閉口しながら、命を育てる苦労を知る。
親や周囲の先生の心配をよそに「Pちゃん」と名付けられたブタは成長し、卒業が近づく。もはや仲間となったPちゃんを約束通り食べるのか。子どもたちは真剣に悩み、話し合う。
前田監督は95年、テレビドキュメンタリーで知ったこの実践をすぐ映画にしたいと考えた。「助監督時代はずっと子ども担当。子どもを見る目とコミュニケーションには自信があったので、子どもの映画をずっと撮りたかった」。ただ映画界では「実写の子ども映画は当たらない」が“定説”。渋る人々を粘り強く説得し、企画を磨いた。人気の妻夫木聡が担任役を快諾したことで追い風が吹いた。
児童のオーディションでは監督が応募した1300人全員に会った。「クラス全員が主人公の映画にしたい」。撮影の3カ月前から合宿や討論などのワークショップを重ね、何度も個人面談し、それぞれの子の個性や思いを脚本に反映した。ただし「子ども用」の脚本は大人のせりふと設定だけで、何を言うかは本人まかせ。学級会では7台のカメラが、必死で思いを伝えようとする姿をとらえた。
「全員の意見を把握していたつもりだったが、本番の発言には何度もビックリ。『農場の人だって可愛がったブタをつらい思いをして手放してるんだよ』なんて他人の立場まで思いやる。いつの間にこんなに成長したんだとうれしくなりました」
映画では学校の四季が描かれるが、撮影は冬場の2カ月間。寒空の下で夏休みの場面を演じた児童たちは、撮影の合間に大小11匹のブタを交代で世話した。小屋もみんなの手作り。ひとつの学校のような現場だった。「教室という小さな場所の出来事だけど、どこかで世界とつながっている。食のこと、命のこと、生きること。子どもたちと一緒に考えてみて下さい」
東京のシネ・リーブル池袋などで公開。(深津純子)