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《東京国際映画祭:星取りレビュー》「ハムーンとダーリャ」(★★☆☆☆)

2008年10月25日

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写真(C)Kanoon( Inst for the Intellectual Devloment of Children and Young Adults)

■愛と勇気映す、色鮮やかなおとぎ話

 絵に描いたような“ペルシャのおとぎ話”だ。「愛と勇気が一番大事」と子どもに諭すような教育映画の趣には、良くも悪しくも驚きがあった。

 イランの砂漠に、歌の上手な少年ハムーンがいました。幼なじみの美少女ダーリャとは相思相愛。ある日、ダーリャが重病に。治すには、砂漠のかなたの池にいる黒い魚を飲まなくてはなりません。ハムーンは砂漠を歩き続けました。そこへ、結婚に大反対のダーリャの兄がじゃましに来ました。のどがかわいて死にそうになった彼を、ハムーンは救ってあげて仲直り。共に魚をつかまえて帰り、ダーリャを助けましたとさ……。

 愚直なまでに無駄と装飾をそぎ落とした筋書きは、メッセージを分かりやすく伝える効果があった。また、少年と少女、彼らの母やきょうだい、友人たちが生き生きと映されてもいる。少年の過酷な旅を通して、愛や友情に対する固い信念も描かれている。灼熱の太陽の下、砂漠と砂嵐の中で暮らす人々の営みを映す際には、映像的な目配りもある。たとえば、生糸を樽に浸して真っ赤に染め上げ、それを紺碧の青空にすがすがしく干す姿、バラ水を作るため農園でピンク色のバラの花びらを集める姿、真っ赤なトマトをつみ取り、がぶりとかじる姿。色の少ない砂漠の中で、どれも鮮烈さを放つ。主人公の少年が陶然と歌いながら奏でる民族楽器ドタールの金属的な音色は、人々の哀歓を代弁するだけでなく、映画の中の音世界を引き締めている。

 ただ、やはり千年も前から語り継がれてきた童話のような、通り一遍で一本調子の話に映る。正しい者は最後まで正しく、悪い者は改心する。善悪両面を併せ持ったり、その葛藤に苦しむ人は出てこない。過酷な運命や時代にあらがって生きる人間をけれんなく映すことが、イラン映画の得意とするところだった。もう少し、人物を肉付けする逸話や、彼らが生きる「今」という時代への言及、展開にひねりがあってもよかったのではないか。

 イランのエブラヒム・フルゼシュ監督は、94年にスイスのロカルノ映画祭でグランプリを受賞し、名匠アッバス・キアロスタミ監督の脚本を映画化したこともあるが、日本では無名に近い存在だ。この作品のような自我や作家性を抑えた語り口は、時代を超える力を持つのかもしれない。イラン映画の別の一面を見せてくれたとも思える。(アサヒ・コム編集部 宮崎陽介)

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