現在位置:
  1. asahi.com
  2. エンタメ
  3. 映画・音楽・芸能
  4. 映画
  5. 記事

記録映画フィルム、保存に力 研究者らセンター設立

2008年10月25日

印刷

ソーシャルブックマーク このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

 日本の戦後を記録した貴重な映像が、いま危機にある。引き取り手のないまま現像所の倉庫などに眠っている「オーファン(孤児)フィルム」が膨大にあり、それらのフィルム原版の劣化と廃棄が始まっている。文化遺産ともいえる記録映画の救済と活用を目指し、27日には「記録映画保存センター」(東京都千代田区)が設立される。手始めとして岩波映画製作所が作った記録映画3898本の保存と再上映、研究利用に取り組む。

 保存センターの前身である「記録映画保存と利用研究会」(後に記録映画保存センター準備会に改称)は2007年6月、映画関係者や研究者が集まって発足。東京大学大学院情報学環の吉見俊哉学環長を座長として、映画フィルムの保存状況などを調査してきた。

 聞き取り調査によると、イマジカや東京現像所など日本の五つの現像所の倉庫に保管されているオーファンフィルムは約5万本にのぼる。映画の複製をつくる際、同一現像所に発注がくるように、フィルム原版を現像所が無償で保管するという商習慣があったためだ。結果的に何十年にもわたり預けっ放しにされたフィルムは膨大になった。

 「フィルムが波打ったり、べとついたりするビネガーシンドロームという劣化現象や、行き先のないフィルムの廃棄がすでに始まっている。過ぎ去った時代を映し直すことはできない」と、村山英世事務局長は危機感を募らせる。

 これらのフィルムは、映画制作会社やスポンサー企業の倒産、担当者の変更などによって、引き取り手がいなくなるケースが多い。 1990年代以降のデジタル化などで従来の複製作業の必要がなくなり、意味のないまま年間数千万円もの倉庫代を支払っている現像所もある。運良くスポンサーと連絡が取れ、フィルムを返却しても、作品が確実に保存される保証もないという。

 保存センターでは解決策を探るモデルケースとして、岩波映画の保存と利用に取り組むことになった。岩波映画は1950年に創業。小口八郎監督「雪の結晶」(53年)、羽仁進監督「不良少年」(60年)、土本典昭監督「ある機関助士」(63年)、羽田澄子監督「痴呆(ちほう)性老人の世界」(85年)など数多くの名作を残したものの経営不振によって98年に倒産。その後、2000年に日立製作所が管財人から残された映像を受け継いだ。

 昨年12月、日立側から保存センター準備会に、保存しているフィルム3898本の扱いについて相談があった。内訳は自主制作1267本、スポンサーから依頼を受けて制作したもの2631本。連絡先が分かったスポンサーに寄贈依頼書を発送し、177社955本の寄贈同意を得た。これらと日立が権利を持つ自主制作映画を合わせた2222本を東京大学と東京芸術大学に寄贈する準備を進めている。手紙を出しても無回答で宙に浮いたままの作品1180本は、長野県木曽町の地元企業の協力を得て、湿度の低い高原地帯に倉庫を確保し、一括して緊急避難させる計画も進めている。

 正式発足する保存センターは今後、記録映画の画像データベースを作成、検索して誰もが利用できるようにする。さらに映画の研究や教育利用にも取り組む。センターが扱う映画リストは、映像産業振興機構が運営するサイト「ジャパン・コンテンツ・ショーケース」に掲載する。来年2月からは、東大情報学環・福武ホールで、作品を順次上映し、映画の保存をテーマにしたシンポジウムを催す。

 吉見学環長は「このままでは日本の貴重な文化遺産が失われることになりかねない。現行の著作権法などの法律ではオーファンフィルムの救済は極めてむつかしい。法的な面からの整備も急がれている」と話す。(徳山喜雄)

検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内