今年の東京国際映画祭が10月末に終わったが、来年は会場を移すという話を聞いた。「渋谷と六本木」が「六本木と銀座」になるらしい。今年は秀作ぞろいとも言われた東京映画祭。ただ、施設や運営の面では、トップ級の国際映画祭の水準には遠い。
まず、渋谷と六本木の2会場で開くのが、つらい。詩人コクトーが言ったように、映画祭は出会いの場所だ。距離があっては、関係者同士や、監督と観客が気軽に出会う親密な空間はできにくい。
さらに、近年の主会場は六本木のシネコンだ。フランスのカンヌなど、世界の主要映画祭は5千人級の大ホールを使う。ビルの中のシネコンでは、監督や出演者の入場を華やかに演出するのは難しいし、舞台や楽屋が無いので、上映前のあいさつは間に合わせの印象になる。今年は入場の通路となるカーペットの色を、「万国共通」の赤から、環境を意識した緑に変えた。そんな仕掛けも生きない。
85年の第1回では、渋谷のNHKホールを中心に、徒歩圏の渋谷駅周辺の映画館などを併用した。中心はNHKから東急文化村の大ホールに移り、やがてそこも離れ、近年は、経済効率を目指すシネコン中心の開催だ。そういえばフランス映画祭も、横浜の大ホールから六本木のシネコンに移って魅力を半減させた。
来年会場を移すなら、いっそ銀座だけで開いてはどうか。東京国際フォーラムがあり、近くに京橋のフィルムセンターのようなホールが多数あり、シネコンでない大型映画館もある。東京映画祭より小規模な映画祭だが、地道に続く東京フィルメックスが、今年は22日に銀座で始まる。提携するのも一案だ。
開催会場の他にも、アラは目立つ。満員札止めで映画の関係者が見られない場合が多いこと、カタログに広告が多すぎること……。
まだまだ、事前に映画祭のトップが言った「4大映画祭をめざす」というかけ声はむなしい。集まる映画の質が上向いたのなら結構。あとは「構造改革」だ。(古賀太)