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〈アカデミー賞特集〉「ミルク」

2009年2月16日

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写真写真写真「ミルク」(C)2008 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED

 ゲイを公言して米サンフランシスコの公職に選ばれたハーヴェイ・ミルクの劇的な半生を描く。この映画に格好の素材はかつて、ロバート・エプスタイン、リチャード・シュミーセン両監督がドキュメンタリーにした。今回の「ミルク」は劇映画に仕立てた。米コロンバイン高校の銃乱射事件の恐怖を、とぎすまされた映像でまざまざと描いたガス・バン・サントが手がけたことも、注目される理由の一つだ。

 今また、なぜ、ハーヴェイ・ミルクか。くしくも、初の黒人大統領が誕生し、世界に変革を求める空気が覆う。ミルクが暗殺されて約30年、変革を求めた「異端」を検証しようという機運が兆しているのか。

 ミルクの生涯は、既によく知られている。先のドキュメンタリーは85年、アカデミー賞長編記録映画賞を受賞。99年には、米「タイム」誌が「20世紀の英雄・象徴的人物100人」に選んだ。日本でも「ゲイの市長と呼ばれた男」(草思社)が刊行された。

 72年、ニューヨーク。金融・保険業界で働いていたミルクは、男の恋人と自由の地サンフランシスコに渡る。「カストロ地区」と呼ばれる街に小さなカメラ店を開き、ゲイたちのサロンになる。ミルクはゲイ、高齢者、アイルランド系の移民労働者らの権利解放を求め、市政執行委員に3回立候補するが、落選。4回目の77年に、ついに当選する。彼の選挙運動や集会、同性愛者の教師を解雇できるとした「提案6号」への精力的な反対運動を通じて、その力強い人間像を描いた。また、「提案6号」が全米を真っ二つにし、ミルクと、彼を支持した市長を暗殺した元同僚委員に軽い罪が下される様子は、問題の根深さや社会の不穏な空気を映している。ミルクは生前、暗殺を予感し、その思いをテープに吹き込み続けた。そのテープをなぞる形で、彼の半生と時代をたどる。

 雄々しいショーン・ペンが、なまめかしい表情や所作、男性との濃厚なキス、ベッドシーンを見せ、主演男優賞候補に。監督特有の硬質な映像との食い合わせが、この映画の妙味だ。(アサヒ・コム編集部 宮崎陽介)

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