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〈アカデミー賞特集〉「戦場でワルツを」

2009年2月16日

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写真写真「戦場でワルツを」

 初公開の場となった昨年のカンヌ映画祭で、並み居る名匠の秀作を押しのけて、最も話題をさらったアニメーション映画だ。先の東京フィルメックスでも最高賞を受賞した。

 06年冬。映画監督のアリは旧友に呼び出され、夜ごと、うなされる悪夢の話を聞かされる。それは、26匹のたけり狂った犬が牙をむくというもの。80年代初頭、レバノン侵攻に従軍した後遺症だった。アリは、自分の脳裏には失われてしまった当時の記憶をたぐるため、戦友を訪ねて取材する…。「失われた記憶を表現するには、実写よりアニメが適していた」と、カンヌで監督は語った。

 その趣向は成功した。深夜の侵攻の光景は、漆黒の中に黄色い照明弾の光が明滅する。人物の表情は無機的で、温かさがない。自らイスラエル兵士として従軍したアリ・フォルマン監督が実体験を描いたこの映画に、自国を擁護したり、自己弁護したりする気配はなく、全体を虚無と悲しみが覆っている。

 イスラエルによるガザ侵攻は現在進行形だ。当然、その現実が、映画への関心をさらに高めたのは間違いない。とはいえ、視点はイスラエル側に置かれており、米国での評価がひときわ高い。米脚本家組合や監督組合の賞、そしてゴールデングローブ賞と、アカデミー賞の前哨戦を総なめしている。昨年の「ボーフォート レバノンからの撤退」に続くイスラエル映画のノミネートだ。

 カンヌ映画祭の審査員会見で、同作が賞から漏れたことに対し、世界の報道陣は審査員長のショーン・ペンに異を突きつけた。ペンは「映画を政治的なメッセージ性で判断しない。政治は生活をよくするもので、芸術とは関係ない」と述べていたが、それでも「政治」に配慮したとの声が、報道陣の間でしきりだった。イスラエル・パレスチナ情勢が緊迫する中で、賞を投票で決めるアカデミー会員たちの意思表示が見ものだ。(アサヒ・コム編集部 宮崎陽介)

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