現在位置:
  1. asahi.com
  2. エンタメ
  3. 映画・音楽・芸能
  4. 映画
  5. 記事

斬新な表現光る日本勢 ベルリン映画祭報告(下)

2009年2月18日

印刷

ソーシャルブックマーク このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

写真上映後、観客らの質問に答える園子温監督(左)、安藤サクラ(中央)=ベルリン、高橋写す

 コンペ部門の授賞式前夜、主会場そばのギャラリーで、国際批評家連盟賞の発表があった。斬新な作品が集まるフォーラム部門から選ばれたのは、園子温(その・しおん)監督の「愛のむきだし」。2時間後、独創的な映画に贈られるカリガリ賞の授賞式でも、同じ作品名が会場に響いた。(ベルリン=高橋昌宏)

■「愛のむきだし」が受賞

 母の死後、神父の父と暮らす高校生(西島隆弘)が主人公。日々ざんげを求める父に気に入られようと、盗撮という罪を意図的に重ねる。一目ぼれの女性(満島ひかり)、カルト教団の勧誘者(安藤サクラ)とのかかわりから、愛の本質とは何かという壁にぶつかっていく。

 同部門の開幕作品にも選ばれ、運営側、批評家どちらも高い評価を与えたことになる。カリガリ賞は「愛の意味、宗教、社会について考えさせ、よくある“政治”映画以上に政治的」とし、同部門ディレクターのクリストフ・テルヘヒテは「ラブストーリーという枠や定義を超えたラブストーリー」とたたえた。

 予兆はあった。約4時間の長尺にもかかわらず、プレス向け、一般上映とも途中退席はまばらで、エンドロールで大きな拍手が送られた。園監督、安藤と観客との上映後のやりとりも盛り上がった。

 宗教、罪の意識についての話題が目立ったが、「日本に変態は多いのか」という質問に「みんな、全人類が変態だと思っています」と園監督。そこで拍手がわいたのは、自らとは異なる価値観を「悪」と敵視しやすい今の社会とだぶったためかもしれない。

 ドキュメンタリー「選挙」が07年のフォーラム部門で話題を呼んだ想田和弘監督は今回、精神科診療所の患者、医師たちを見つめた「精神」で招かれた。満席となる回が出るなど、関心を集めた。

 質疑応答で撮影の苦労を尋ねられると、監督は「日本のテレビドキュメンタリーのように患者の顔を隠したり、声を変えたりしたくなかった。撮影をお願いしても、10人中、8、9人には断られた」と振り返った。

 3年ぶりに同部門に戻ってきたのは、舩橋淳監督。米国を舞台にした前作「ビッグ・リバー」とうって変わって、今回の「谷中暮色」は東京の下町、谷中で撮った。

 フォーラム部門は前身の時代の91年から、園監督に目を付け、今回が4作目。2度目の想田、舩橋両監督もおり、映像作家の成長を見守っていく意志が感じられる。「コマーシャリズムとは関係ないところで、映画でしかできない表現をちゅうちょなく見せてくれる場所。また、ここに帰ってきたいというモチベーションがわく」と舩橋監督は語る。

■「ジョン・ラーベ」 南京事件題材「新たな発見」

 日本関連の作品では、旧日本軍による「南京事件」を題材にした「ジョン・ラーベ」(ドイツ、フランス、中国の共同製作)が上映された。現在のところ、日本での公開予定はない。

 ジョン・ラーベはドイツの会社員として中国に駐在中の37年、ナチ党の力を利用することで日本の力が及ばない保護地区を作り、大勢の市民を救ったとされる。

 作品では、空襲から市民や建物を守るため、巨大なナチ党の旗を上空から見えるように広げるシーンが印象的だ。旧日本軍の兵士が捕虜を大量に銃殺したり、殺害した市民らの首とともに記念撮影したりする場面も描かれている。

 ドイツ人のフローリアン・ガレンベルガー監督は会見で「映画のほとんどはラーベの日記と歴史的な情報をもとにしている。難しかったのは、そこからドラマを作り上げること。芸術家として自由に映画を作り上げたが、ラーベの話は真正のものとして誠実に描いたつもりだ」と語った。 日本人の俳優も登場し、将校役を香川照之、柄本明、杉本哲太らが演じている。同席した香川は「こういう人がいたのは、新たな発見だった。映画は、日本人にとって難しい問題を含んでいる。日本でも公開されることを望んでいますが……」と話した。

検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内