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飾りなくつづる家族愛 映画「私の中のあなた」

2009年10月5日

 白血病の少女とその家族の愛と苦闘を描いた映画「私の中のあなた」が、9日から全国公開される。ニック・カサベテス監督が米国でベストセラーになったジョディ・ピコーの小説を基に、よりリアルでシビアな物語に仕上げた。お涙ちょうだい的な「難病もの」とは一線を画する感動作だ。

 主人公は11歳のアナ。彼女には白血病の姉ケイトがいる。ある時、アナは「姉に腎臓を提供したくない」と両親を提訴する。アナは実は姉のドナーとなるべく遺伝子操作で作られ、生まれた時から姉に骨髄や血液などを提供させられていた……。

 姉思いだったアナがなぜそんな行動に出たのか。映画はミステリー風に展開する。カサベテス監督は「生死、家族、愛という大きな主題に挑んだせいで、大変苦しかった」と言う。「複雑な問題に簡単な答えを与える映画にしたくなかったんでね」

 難病ものにありがちな「偽善」のにおいが一切しない。「私はいつも十分リサーチして作るんです。今回も、がんで入院している大勢の子供や親に会いました。その結果、エンディングを原作とは全く異なるシンプルなものに変えたんです」

 原作は最後に奇跡が起こる。「娯楽作としては大変よく出来ている。でも、そんな奇跡を体験した人は現実にはいなかったので、奇跡を起こすのをやめました。だから原作のファンは私のことが大嫌いなんです」

 終盤、ケイトの病室に家族や親類が集まる場面がある。言葉を尽くして彼女を励ます親類に対し、両親は一言も発さないでただ彼女を見つめる。万感の思いがこもる名場面だ。「私も大変好きなシーンです。親類は道化に見えるが、彼らも愛情を持って励ましている。ただ、人生の中で語る言葉がなくなり、流れにゆだねるということがあるんですね」

 カサベテス監督は50歳。これまでも「きみに読む物語」など芸術と娯楽のバランスの良い作品を発表してきた。父はジョン・カサベテス。母はジーナ・ローランズ。映画一家の感性を受け継いでいるのだろうか。

 「皆に聞かれるけど、分からないんです。こうした作風の映画監督になるとは、私自身、思ってもみなかった。今もどんな映画を作りたいのか、もがきながら探していますよ」(石飛徳樹)

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