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美しい走り リアルな感動 「風が強く吹いている」大森寿美男監督に聞く

2009年11月6日

写真:大森寿美男監督拡大大森寿美男監督

 脚本家の大森寿美男が初めて監督に挑んだ。弱小大学の陸上部が箱根駅伝で激走するまでを描いた「風が強く吹いている」(公開中)。後半約1時間に及ぶ駅伝場面の迫力と感動は特筆ものだ。スタッフと役者が一丸となって「たすき」をつないだ結果だという。

 大森監督は脚本家としてNHK連続テレビ小説「てるてる家族」や大河ドラマ「風林火山」、映画「次郎長三国志」などを手がけ、向田賞も受けている。今回も最初は脚色のみの参加だった。「沿道に住んでいたので箱根駅伝には興味があった。でも、撮影が困難を極めるだろうし、映画にはならないと思ってました」

 監督以外のスタッフが続々決まっていた08年正月、実際の駅伝を視察しに箱根へ出かけた。「皆で温泉につかっていた時、最も思い入れの強い人間が監督をしないと、この映画は出来ない、という話になった。それはお前だろ、と」

 大変なのは撮影場所の確保だった。実際のコースはほとんど道路使用の許可が下りない。全国を回り、マラソンの盛んな九州での撮影が決まった。箱根とは風景が違うが、「沿道を応援の人で埋めれば、背景は何とかなると思った」。これに実際の箱根駅伝の空撮を組み合わせ、リアルな空気を生み出した。

 もう一つの問題は、役者の走る姿だった。「最初に走ってもらったら、みな絶望的にひどくて。コーチもあきらめ気味でした。でも走りにウソがあったら、この物語は説得力を持たない。そこから皆すごく頑張った。特に林遣都君のフォームは本当の選手よりも美しく見える、とコーチも太鼓判を押してくれました」

 主人公は駅伝チーム全員だ。重い故障を抱えるエリートランナー(小出恵介)と、陸上をやめた天才走者(林)、あとは走る意欲のない有象無象の8人。彼らが走る箱根路の全10区間を、一人ひとりのドラマを織り交ぜて描いたせいで、駅伝シーンだけで1時間に及んだ。

 「この10人の中に捨てキャラを作ってメリハリをつければ、もっとコンパクトに出来た。でもこのドラマは、様々な力量の10人がたすきをつないで一つのことを成し遂げる物語。10人全員が生き生きしていないと駄目なんです」

 駅伝は選手の動きが単純で映像になりにくい。「音楽で盛り上げようとか、嫌らしいことを考えていたけど、役者の走る姿にすごく力があったので余計なことはやめようと思いました」。日本テレビのスポーツアナらも参加しているが、実際の放送より控えめにしゃべっている。「実況で盛り上げたくはなかった。あくまで背景として使わせてもらいました」(石飛徳樹)

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