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映画小僧が作る冒険活劇 タランティーノ監督、新作を語る

2009年11月20日

写真:クエンティン・タランティーノ監督=鈴木好之撮影拡大クエンティン・タランティーノ監督=鈴木好之撮影

 子供の頃、GIジョーの人形で遊ぶのが大好きだった。

 「でも、戦争ごっこはまずしない。見てきた映画を人形で再現するんだ。予告編で見たいと思った映画の中身を勝手にでっちあげることもよくやった」

 リトルQと呼ばれた映画小僧は、本物の俳優を前に同じことをやっている。「ジャッキー・ブラウン」は黒人映画、「キル・ビル」はカンフー、「グラインドハウス」はB級アクション。どの作品も、かつて熱中した映画への愛がこもっている。

 新作の「イングロリアス・バスターズ」では、戦争映画とマカロニ・ウエスタンを合体させた。アパッチ族の血を引く米軍中尉がユダヤ系兵士の一団を率いて、ナチス征伐に繰り出す。

 「最近の戦争映画は、被害者の傷を描いた重いものばかりだが、昔は違った。戦争映画は冒険活劇だった。『特攻大作戦』や『荒鷲の要塞』みたいなやつを久々に見たくなったんだ」

 「見たい映画を作りたい」が発想の原点。「ユダヤ人もアパッチ族も同胞の復讐(ふくしゅう)を誓うレジスタンス」と、異なるジャンルも自在に融合させる。好きな要素を盛り込みすぎて、収拾がつかなくなることも。構想10年の本作も、一時はテレビのミニシリーズ級の長さになった。

 「どう切るか悩んでいたとき、ナチスのプロパガンダ映画に出演する戦争英雄という人物を思いつき、活路が開けた」

 映画のプレミア上映での決戦に向けて、〈米兵部隊VS.ナチス〉〈ホロコーストを逃れた女映画館主VS.ナチス〉の攻防が展開する。米軍を支援する英軍将校は映画評論家、スパイは美人女優。フィルムが意外な破壊力を発揮する終幕まで映画づくしの話になったのは、ナチスを逃れハリウッドに渡った名匠たちをたたえる思いがあるからだ。

 音楽も、過去の映画のサウンドトラックで構成した。冒頭に流れる「アラモ」の主題歌は、新宿のレコード店で買い込んだドーナツ盤に入っていた曲だ。

 「実は『アラモ』は見てないんだけど、この曲はカンフー映画でおなじみだった。パリのビストロで流れる『荒野の1ドル銀貨』も東京で買ったアルバムが気に入って選んだんだ」

 脚本は、自宅で様々なサントラを聴いてから執筆する。古今東西の映画の記憶が、映画小僧の創造の源泉になっている。(文・深津純子 写真・鈴木好之)

    ◇

 Quentin Tarantino 63年生まれ。ロサンゼルスの高校を16歳で中退し、ビデオ店で働きながら脚本を書く。92年デビュー。94年「パルプ・フィクション」でカンヌ国際映画祭パルムドール、米アカデミー賞脚本賞を受賞した。

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