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名振付家・モーリスの精神受け継ぐ映画が公開 監督に聞く

2009年11月30日

 名振付家モーリス・ベジャールが没して2年。彼の遺志を継いだモーリス・ベジャール・バレエ団が、未完だった「80分間世界一周」を完成させて行った追悼公演や、新作「アリア」の制作経過などを追った映画「ベジャール、そしてバレエはつづく」(アランチャ・アギーレ監督)が12月19日から東京・渋谷のル・シネマで公開される。彼の芸術をどう伝え、発展させるのか。芸術監督のジル・ロマンに聞いた。

 「モーリスの精神を受け継ぐのは我々だけという思いが仲間たちをつなぎ留めた」。79年に入団、93年以降、副芸術監督としてベジャールの右腕だった。現団員の7割以上を育てただけに、両肩にかかる責任を重く受け止める。

 だが、「ボレロ」や「春の祭典」などの傑作群は技術や背景にある思想も豊かで、生半可な伝承を許さない。

 「ナフタリン漬けにするのでは意味がない。常に作品を問い直す必要があり、そのため、ダンサーの能力を研ぎ澄まさねばならない」

 他の振付家や自身の作品を積極的にレパートリーに加えるのもベジャールの遺志による。「ダンサーが様々な方法で自分を解放し、改めてベジャール作品に問いかければ、より豊かな世界を開くきっかけになる」という。

 今、興味ある才能として挙げたのは2人の若い振付家。うち、トニー・ファーブルは前身の20世紀バレエ団で一緒だった。彼らの新作を、ベジャールの佳品「愛が私に語りかけるもの」と共に12月に上演するという。

 映画に登場する「80分間世界一周」はベジャールの死で中断されたが、彼のプランに沿って完成させた。

 「モーリスは世界一周の順路も決めていた。私は彼のレパートリーの中から、その舞台にぴったり合った振りを探し出し、組み立て、装置を用意し、演出しただけです」

 もう一つの「アリア」は、自身の振り付けで、映画は本拠地ローザンヌでの世界初演までの日々を追っている。団員たちを見守りつつ的確な指示を与えるロマンの、慈父のような姿が印象的だ。

 題材は英雄テセウスがアリアドネの糸玉を頼りに迷宮に入り、怪物ミノタウロスを退治するギリシャ神話。人間の暴力について考察する作品となっている。

 「この神話は人間の内面的な問題、つまり自分自身と、その内面に潜む本能的、動物的な部分をどう和解させるかという問題を提示している。テセウスとミノタウロスは同じ人間の一部なのです」

 来年から、順次各地で公開される。(上坂樹)

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