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「カティンの森」アンジェイ・ワイダ監督 虐殺を今に問う

2009年12月19日

写真:アンジェイ・ワイダ監督拡大アンジェイ・ワイダ監督

写真:「カティンの森」から拡大「カティンの森」から

 祖国の悲劇と抵抗の歴史を描き続けるポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督の「カティンの森」が東京・神保町の岩波ホールで公開中だ。冒頭、「両親に捧(ささ)げる」という字幕が出る。父の命を奪い、母を苦しめた第2次大戦中の虐殺を、改めて「今」に問う。

 ポーランドに、ナチス・ドイツとソ連が侵攻した1939年。アンナは、ポーランド軍大尉の夫がソ連軍捕虜として連行される姿を目撃する。3年半後、ドイツは「虐殺された多数のポーランド人将校の遺体を発見」と発表。アンナは夫の死を伝えられるが、事実を受け入れられない……。

 この虐殺は「カティンの森事件」と呼ばれる。ポーランド東部を占領したソ連が40年、捕虜にした1万5千人ともいわれるポーランド人将校を殺害した。監督が映画化を構想し始めたのは、それから半世紀後だった。戦後、ポーランドはソ連の強い影響下にあった。「冷戦期、この事件はドイツの犯罪とされていた」と監督。89年に共産主義政権が次々倒れた東欧革命が起きるまで、真相はほぼ闇に葬られていたという。

 以後、すぐ製作に取りかかろうと試みるが、事件自体が長くタブー視され、全容を示す資料も、事件を扱った小説も見つからなかった。「世代」「地下水道」「灰とダイヤモンド」の「抵抗3部作」をはじめ、抑圧された人間像を切り出す原作を重厚に映してきた社会派の巨匠は、撮影までに長期をかけた。「見つかった将校の日記を参考にしたり、当時を知っている人にインタビューしたりした。映画は登場人物を含め、ほとんど実話だ」

 監督がつむぐ物語は、残された人たちを軸につづられていく。「特に、多くの女性の話を書くことが大事だった」と話す。監督自身、夫の生還を信じ続けた母親を見て育ったからだ。待つ側を物語ることで、残されて生きる者をも苦しませ続ける戦いの現実を強調したかった。犠牲になった兄のためにソ連の犯罪を意味する墓碑を建てようとする女性も登場する。

 手を縛り、後頭部を撃ち抜き、埋める――。終盤の虐殺場面は、まるで流れ作業のように残酷に映される。「この事件は戦争というより、スターリンの指示による官僚的、組織的な虐殺だろう」。独ソ双方が、相手側の犯罪としてプロパガンダ映画に利用するさまも象徴的に映される。

 劇中、アンナの夫の父にあたる大学教授はドイツの収容所で亡くなる。「言いたいことは一つ。独ソ両国ともポーランドを事実上、『消滅』させることで、同国を思うままに動かしたかった」と述べた。

 各地で順次公開。(高橋昌宏)

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