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松江哲明監督「ライブテープ」 元日の街 74分ワンカット

2009年12月26日

写真:松江哲明監督拡大松江哲明監督

 今年の東京国際映画祭で「日本映画・ある視点」部門の作品賞を受賞した松江哲明監督の「ライブテープ」が、26日から公開される。元日の東京・吉祥寺をミュージシャンの前野健太が歌い歩く姿を74分ワンカットでとらえた異色の音楽ドキュメンタリーだ。

 初詣で客でにぎわう武蔵野八幡宮を起点に、ギターを抱えた前野が歩き出す。バス通りを進み、アーケード街を抜け、目指すは井の頭公園の屋外ステージ。歌いながら、話しながらの道行きを、寄り添うようにカメラが追う。

 昨年の12月に、突然思いついた企画だった。祖母、父、友人を相次いで亡くし、実家で正月を過ごす気分になれなかった。「代わりに自主映画を撮ろう」。すぐに仲間に声をかけた。腕利きのカメラマンと録音技師。大好きな歌を作った前野。地元に詳しい20人もマイク持ちを買って出た。

 「ルートと歌う曲を記した地図1枚が脚本代わり。途中で何が起きても撮影を止めない一発勝負。製作費は80分のビデオテープ代2千円だけでした」

 吉祥寺は独立するまで暮らした街。神社から公園への道は、毎年正月に家族で歩いた。「なじみの街で前野さんの歌を聴きたい」と始めた企画に、いつしか家族の記憶が重なった。「歌詞と街並みが不意にシンクロし、偶然が必然に思える瞬間が幾度もあった」

 自伝的な「あんにょんキムチ」でデビューして10年。ホラーやアダルトビデオなど様々な場でドキュメンタリー的手法の娯楽作を作ってきた。リズミカルな編集術に定評があるが、今回は現場がすべての一発撮り。新たな挑戦だった。

 「でも、僕のやりたいことをみんな理解し、期待以上のものを残してくれた。任せられる仲間がいるから、僕は映画を作り続ける。そう実感できたことは財産です」

 吉祥寺バウスシアターなどで公開。

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